先日、高校の美術部でいっしょだったS君が新作の写真を送ってきた。
珍しく立体作品で、珍しくおもしろいので、珍しくほめたら、珍しく作品を送ってくれた。
私が彼の作品をほめることはまあないです。
ほめても何の得にもならない。
ほめたら損。
これが新作です。
(元は中の絵以外は真っ白だったんです)
で、あちこちに置いたんですがウチの壁紙はどこも白いので作品がほとんど目立たない。
で、枠と中の壁面と床とに色を塗ったんです。
無断コラボレーションです。
ついでに中の絵のタイトルもつけようと思いました。
ちょうど映画のDVDの宣伝パンフレットを送ってきたとこだったのでそれを使うことにしました。
西部劇映画の中に『荒野の風来坊』というのがあったのでそれを切って張り付けました。
私の加筆修正によってS君の作品は、美術館に来た三人の男が『荒野の風来坊』という抽象画の大作を見てるという状況設定になりました。
早速写真にとってメールでS君に送りました。
送信したと思ったら即電話がかかってきたのでいつもヒマなS君らしいなと思いました。
「もしもし、あれ、ええんやけどな、枠の正面だけじゃなくて横と上にも色塗らんとあかんやないか」
「ぬ、塗らんとあかんやないかって、塗らせるつもりやったんか」
「そうや。どんな色塗るかキミのセンスを試したんや」
「・・・正面から見るんやから横とか上は塗らんでいいやろ」
「高校の時からそうやけど、キミは目立たんとこには手抜きするなあ。目につかんとこでも手を抜いたらあかんぞ」
「むっつり」
「色はあれでいいんやけど塗りむらが気になるなあ。高校の時からそうやけど、キミはほんとに仕事が雑やなあ」
「むっつり」
「ああいうところをきっちり塗ってあるかどうかで作品のグレードがちがってくるんや。丁寧に塗らんとダメやぞ」
「むっつり」
「塗り方はイマイチやけど絵のタイトルは良かったわ」
「映画のDVDの宣伝パンフレットからとったんや」
「高校の時からそうやけど、キミはパクるのがうまいなあ。自分で考えんとあかんぞ」
「むっつり」
「しかし『荒野の風来坊』、ボクにぴったりや。現代美術の不毛の荒野をさすらう一匹狼!まさにボクのことや。ボクのことをそういう風に見てくれてたんやなあ。うれしいよ。イメージとしてはジュリアーノ・ジェンマ?」
「どっちかというと小林旭かな」
「アキラか!♪む~かしの名前え~で、出て~えいいまあす~~~~」
S君が気持ちよさそうに歌い出したので電話を切りました。