若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

阪急百貨店で

 朝、ベルトを手に取ったとき、ふと思い出した。
私が初めてベルトを買ったときのことを。

 私が高校一年生、ちょうど四十年前のことであった。
私は、ベルトを買うのに、なぜか梅田の阪急百貨店に行ったのである。百貨店に一人で行くのも初めてであった。

 私は、ベルト売り場で女性の店員に、「ベルトがほしいんですけど」と言った。彼女は、私をガラスケースの前に連れて行った。
 ケースの中には、立派なベルトが並んでいた。値札を見た私は気絶しそうになった。
「数千円!」
私の予算は、数百円だったのである。当時、私の小遣いは、月千円なかったと思う。

 たぶん私の顔色が、さっと変わったのでしょう。血の気が引いたのでしょう。彼女は何も言わず、すぐ私を、ベルト山盛りコーナーに連れて行った。
 今思い出すと、少し腹が立ちますね。高校生の私を見て、数千円のベルトを買うと思うのはおかしいのではないか。純真な高校生の困る顔が見たかったのじゃないかと邪推する。

 阪急百貨店といえば。
それから十数年後、私は立派な社会人になっていた。母が病気で梅田の病院に入院していた。ネグリジェを買って来てと言うので、父と二人で阪急百貨店に行った。それらしいフロアで,若い女性の店員に聞いた。
ネグリジェ売り場はどこですか?」
父と私を見て彼女は聞いた。
「紳士ものですか?」
し、し、紳士ものネグリジェ!?
ワシらは変態親子か?