若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

せこいぞ!修道尼!

 「オークションこそ我が人生」を読む。
著者名失念。オークション会社、サザビーズで競売人をしていた人です。

 競売人というのは、オークション会場で、槌をカーン!と振り下ろして、「ハイ、右後ろの紳士、10万ドルで落札です」とかいう人です。

 オークションというのは、例えば、ゴッホの「ひまわり」を前にして、「さあさ、寄ってちょうだい見てちょうだい。この『ひまわり』、そこにもあるここにもあるという品物じゃございません。天才ゴッホが心血を注いだ逸品、十年前に日本企業のオーナーが43億円で落札して世界をあっといわせたいわくつきの作品!今回、その日本企業が資金繰り悪化のため、換金を急いで投売り!なんと20億円という破格のお値段!といいたいのはヤマヤマなれど、オークション業界のユニクロといわれる弊社なればこそ、9億8千万!と言われて飛びつくようなニューヨークのお客様ではないのは百も承知で7億5千万、なに?そこのご婦人?サインがおかしい?さすがお目が高い!確かにおかしい、このサイン!『ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ』のはずが『ビンセント』になっている!怪しいサインに免じて4万5千円!」と、だんだん値段を下げていくのじゃありませんよ。それは叩き売りといいます。

 三十年程前、サザビーズが全米で「お宝鑑定」をしたことがあるそうです。家庭に眠っているかも知れぬ名品を、サザビーズの社員が鑑定してあげるというものです。地方の美術館を会場に、多い時は何千人もの人が「家宝」を持って集まったらしい。
 ロクな物がないので、すぐ中止になったそうです。

 その頃、修道院の尼さんから、古い油絵があるので見に来て欲しいと電話があった。修道院の屋根の修理費用にしたいとのこと。
 行ってみると、その油絵もロクでもないもので、お茶をよばれながら、残念ですが、と報告していた。
 テーブルの砂糖壷がなんとなく気になるので、底を見た瞬間気絶しそうになったそうです。それは、メディチ家が作らせた、ヨーロッパ最古の磁器だったのです。

 その砂糖壷にオークションで、「3万ドル!」という声がかかった時、席にいた尼さんは、胸のところで十字を切ったそうですが、結局30万ドルで売れたのです。

 その代金の振込みが手違いで1日遅れたそうです。早速尼さんから電話がかかりました。
金利はどう計算してくれますか」

 せこいぞ!修道尼!