若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

バレエの先生、竹刀ビシバシ!

 娘たちがバレエを習い始めたころのこと。

 いつも家内が教室まで迎えに行っていたのですが、他に用事があって初めて私が迎えに行くことになりました。
 私はバレエについては全く知らなかったけれど、「バレエの先生」については、はっきりしたイメージがありましたね。
 スマートで、手と足と首が長く、髪は金髪とは言わないがまあ栗色かな、まつげクルクルの妖精のような美女。

 さて、教室に入って先生はどこかと探したけど見当たらない。ちびっ子たちが踊っている他はお迎えのお母さんたちがいるだけ。
 と、その時、凄まじい怒鳴り声が響き渡った。

「さっき言うたこと、もう忘れたんか〜っ!」
驚いて声のほうを見ると、子供たちの中にほとんど背の変わらない中年の女性が竹刀を振りかざしている、と見る間に、竹刀を振り下ろす!バッシーン!
 ものすごい音!
「何べん言うたらわかるんや〜っ!」バッシーン!

 竹刀を女の子に突きつけると、
「先生の名前なんやっ?!先生の名前はなんて言うんやっ!」バッシーン!
「言うてみー!」バッシーン!
先生のものすごい迫力に、女の子は蚊のなくような声で
「○○×子先生」
「そやなあっ!○○×子先生やな!先生の名前は覚えてるんやな!そやのに、先生がさっき言うたことは、もう忘れてしもたんかっ!」バッシーン!

 先生の怒鳴り声と、竹刀の音におびえたか、お迎えの母さんに抱かれた女の子が「あ〜ん!」と泣き出した。
 先生は、ばっとそちらを向くと、竹刀をぐいと突き出して、強烈な声で叫んだ。

「じゃかましーっ!親ーっ!連れて出えーっ!」バッシーン!

 女の子を抱いたお母さんは、すっ飛んで出て行きました。

 あきれました。
私が「バレエの先生」に対して抱いていた、美しきイメージ、夢淡き幻想は、音を立てて一挙に崩壊したというか、一瞬のうちに木っ端微塵に砕け散ったというか、もうほんまに茫然自失であった。
 「○○×子バレエ教室」と言うより、「金正日義勇肉弾舞踊隊」という感じであった。

 その後、徐々に、この先生が、楽しい、愉快な先生であることを知るようになるのですが。
 そして、ここだけの話ですが、この先生こそ、今をときめく日本バレエ界のホープ、○○君のお母さんなのである!