若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

講演会で岡本太郎を絶句させたおばさん

某信用金庫主催の講演会に行った。
講師はテレビでおなじみの、大学教授であった。
演題は、「日本経済の今後」
教授は、日本経済の問題点は、金融機関が役割を果たせていなくて、金が中小企業にまで回らないことだと話された。

講演の後の懇親会で、信用金庫理事長が挨拶した。
「先生のお話でございますが、当金庫に限りましてそのようなことはございません。お困りの企業がございますれば、お気軽にお声をおかけください。『おい!理事長!頼むわ!』と、お声がかかりましたら、早速に診断させていただきます」

早速貸してくれるのかと思うではないか。頼んまっせ、理事長。

二十数年前、岡本太郎さんの講演を聞いたことがある。
公会堂の前を歩いていて、看板が目に入ったので、時間もあったし聞いてみようと思ったのである。
岡本さんの本は何冊か読んでいた。どんな話か楽しみであった。

この講演は、市の医師会の美術同好会の企画であった。会員たちが持っている美術作品を公会堂で展示すると同時に、記念講演会を開かれたのである。
よい企画であると思ったが、私も全く知らなかったくらいで、明らかにPR不足であった。
千人位入る公会堂に、十数人の客であった。

岡本さんは、演台に向って歩きながら「少ないなー!」と言われた。
司会のお医者さんは、お忙しい中来て頂いたのに、PR不足で客が少なくて申し訳ないと言って、岡本さんを紹介すると、コソコソと引っ込んだ。

岡本さんは、用意してきた話はあるが、客が少なくてやる気をなくしたので、質問があれば答えますと言われた。

質問する人などいないだろうと思っていたら、すぐに60歳くらいの女性が手を挙げた。
岡本太郎さんと、お母さんのかの子さんの芸術的な関係について聞かせて下さい」

岡本さんは、目をむいて絶句した。
そして、「そ、そんなもん!関係ないですよ!」
取り付く島もないのであった。

すぐに同じような年輩の女性が手を挙げた。
「最近、公民館の油絵教室で絵を習い出したんですが、絵ってどういう風に描いたらいいんですか?」

前衛芸術家、爆発する芸術家に対して、これはまずい質問だと思った。
案の定、岡本さんは、先ほど以上に目をむいて絶句した。
そして、「そ、そんなもん!好きなように描きゃいいんですよ!」

非常にあっさりした講演会であった。