若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

歳歳年年人不同

私は、十五年間、毎朝同じ時間の電車に乗っている。
この十年は、バスも同じ時間のバスに乗っている。

私くらいのもんですよ。
で、変わり行く顔ぶれを見て思うのである。

年年歳歳花相似
歳歳年年人不同

別に、私が花だというのじゃありません。

年年歳歳電車同
歳歳年年人不同

詩的でない。

移ろい行く無常の世にあって、なんだか私だけが永久不変、「万物の尺度」という気がしないでもない。「万物の尺度」は言い過ぎにしても、「万物の尺取虫」くらいは言えるのではないか。

十数年前、毎朝私の前を五十過ぎくらいの男性が二人歩いていた。
その人たちを、私はいつも坂の途中で追い越した。
先日、駅へ向かっている時、私の前を赤ちゃんを抱いた若いお母さんが歩いていた。
私は、坂の途中で追い越すことになるな、と思った。
ところが、何たることか、坂に差し掛かると、どんどん引き離されたのであった。

石井好子さんの話を思い出した。
石井さんは、高齢者の水泳大会に出場されている。70歳を越した今も、毎日二千メートルは泳いでおられるという。
アナウンサーが、記録の方はどうですかと聞くと
「毎年、10秒ずつ遅くなってます」

私の父は、スポーツマンだった。

野球、水泳、スキー、スケートその他なんでも楽しんだようである。
亡くなる直前、散歩から帰った父が言った。
「公園の横を歩いてたら、子供たちが野球をしていて、金網を越えてボールが飛んできた。拾って投げてやろうとしたら、金網を越すことができなかった。これほど衰えているとは思わなかった」

会社への道で、自転車に乗った女性が颯爽と通り過ぎて行った。
三十過ぎの女性で、どこかで見た顔であった。
なかなか思い出せなかったが、「あの人だ!」と思った。

以前、毎朝すれちがった人である。
その頃、彼女は自転車の前と後ろに男の子を乗せて、非常に険しい表情でハンドルにしがみつくようにして、猛然と突っ走っていた。
保育園に送ってから、お勤めだったのであろう。
今は、とりあえず一段落ということで、あのような穏やかな表情になられたのであろう。
私も、とりあえず、ご苦労様でしたと申し上げたい。