若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

山根赤鬼さん

漫画家の山根赤鬼さんが亡くなった。

懐かしい名前である。
私の子供の頃活躍されて、その後どうされているかなと思っていたが、私が知らなかっただけで、ずっと活躍されていたのであった。

子供にとっては、「山根赤鬼」という名前が強烈であった。
山根青鬼という人もいて、今回初めて知ったが、双子の兄弟だそうである。

私が読んでいた雑誌で、二人の合作を発表されたことがあった。
その時、赤鬼さんの担当ページは赤インキ、青鬼さんの担当ページは青インキで印刷してあった。
今なら、「編集者のお遊び」と思うところであるが、小学生だった私にとって、これは実に謎めいた暗合であった。
「赤鬼」と赤インキ、「青鬼」と青インキの結びつきがなんとも神秘的で心から不思議に思った。
子供には理解できない、奥深い世界があるように思ったのである。

新聞によると私より十一歳上ということなので、十代から活動されていたようである。

はじめて子供向けの雑誌を読んだときのことはよく覚えている。
幼稚園の時、私が一人で留守番することになって、母が買って来てくれたのである。
これが私の、「漫画初体験」である。

記憶の中の私は、薄暗い部屋で、世の中にこんな面白いものがあるのかと、一心不乱に読んでいる。
それまでは、絵本くらいしか読んだことがなかったのだと思う。

その時読んだ漫画の中で、未だに忘れられないシーンがある。
西洋の物語であった。
悪者たちがお姫様をさらっていくのであるが、魔法をかけてお姫様を紙みたいに薄っぺらくしてしまう。そして、お姫様をクルクルッと巻いて持って逃げるのである。

これには驚いた。衝撃であった。
字で読んだのならそれほど驚かなかったと思う。
紙のように薄っぺらくなったお姫様を見て、私は呆然となってしまった。

作者が誰かは知らないが、教えてあげたい。
五十年以上前にあなたの漫画を読んで呆然となったことを未だに覚えています。

漫画家冥利に尽きると思う。