若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

ウクレレをなめてはいかん

Kさんは、A子さんとハワイアンのコンビを組んでいる。
A子さんは、Kさんより年上で、若い頃プロのジャズ歌手を目指してバンドに所属していたこともあると言うだけに、歌は勿論、ウクレレや、マラカスなども立派なものである。

そのA子さんが、自分がたまたまウクレレ教室の後輩であると言うだけで、Kさんを「先輩」として立てておられるのは気持ちが良い。
日本女性特有の奥ゆかしさの持ち主である。

しかし、ステージで見ると、このお二人の関係は、どう見ても、しっかり者の奥さんと頼りない亭主、と言って悪ければ、しっかり者の姉さんと頼りない弟、と言って悪ければ、しっかり者のお母さんと頼りない息子と言う感じである。

ステージでは、二人そろいのアロハシャツ、ウクレレを持って、A子さんは髪にハイビスカス。
始める前にいつもKさんのしゃべりがある。
「え〜、私たちがこれからやりますのは、クラシックでもなくジャズでもなく、まあ、癒し系とでも申しますか・・」
これはいらんと思う。
二人そろいのアロハにウクレレである。
ハイビスカスもある。
どこから見ても、ハワイアンしかないでしょう。

ウクレレ合奏、小犬のワルツ」とは思わない。
ウクレレ合奏小犬のワルツ、忙しいでしょうな。

Kさんの曲の終わり方にはクセがある。
終わる直前、一呼吸おいて、とってもおすましさんの顔をして、もったいをつけて身体をくねらせてジャラ〜ンとキメのコードを鳴らしてから終わる。

ある時、Kさんが一呼吸おいてとってもおすましさんの顔になったので、これはキメのコードだなと思った。
で、ジャラーンと鳴らしたその音がとてつもなくヘンな音だったのである。
内助の功を誇るA子さんさえ、思わず吹き出してしまった。

ウクレレは弦が四本だ。
四本の弦をどう押さえればこんなヘンな音が出るのか?

こういうときのKさんは、照れず笑わずあわてず騒がず、堂々と弦を押さえなおす。
そして弾きなおした音がまた先ほどに勝るとも劣らぬヘンな音。
またも吹き出すA子さん。

そのあとKさんが照れず笑わずあわてず騒がず連続二十三回弾き直し続けたことに驚きはしなかったが、とうとう最後までキメのコードが鳴らなかったのには驚いた。

これにはさしものKさんも憮然たる表情で、
「ま、こんなもんですか」と意味不明の言葉を発してその曲を終わってしまった。