若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

手作り百軒横町

きのう百貨店に行ったら、「手作り百軒横町」という催しをしていた。

素人が作った品物を自分で売るというもので、定期的に開催している。
何度か見たことがある。
出品者は、ほとんどが中高年の女性で、草木染とか、革細工とか、編み物とかを出品している。

見てみようかなと思って、そのコーナーに入って行ったが、奥の方にあの人を見つけたのでやめた。

ベレー帽の70代と思える男性である。
以前、この「手作り百軒横町」で、この人につかまったことがあるのだ。

この人は、木製の「家具のようなもの」を並べていた。
店の前に出品者の名前が書いてあるが、この人は、「○○手作り協会会長」という肩書きがついていた。
作品の説明には、「吉野杉、大台杉の倒木を利用したものです」と書いてあった。

こういうものは趣味のものである。
こういう趣味のない私の目には、「廃材を利用した」としか見えなかった。
と言うか、廃材をそのまま並べただけと思えた。
板に棒を打ちつけた、イスのようなものや、机またはテーブルまたは台という感じのものが多かった。

この作者自身を見て、倒木とか廃材とか言う心無い人もいるだろうが、ヒューマニストである私には、まあ、「古木」のような方に見えた。
この方の無精ひげも、ヒューマニストの私には古木の苔のように見えた。

私は、かなり大きな不定形の板切れに、棒を四本打ちつけた物をつくづくと眺めた。
いったいこれは何か?
9800円という値札がついていた。

しばし不思議な感慨にとらわれて見ていた私は、ふと視線を感じた。
作者である廃材じゃなかった古木のような方が、満面に笑みを浮かべて、「作品」を見つめる私を見つめていたのである。

彼は私に近づくと、意味ありげに笑いながら言った。
「安いやろ」

私はこけそうになった。
古木にふさわしからぬぞんざいな物言いである。
いきなり、「安いやろ」とはなにごとか。
私が、「9800円」という値段にほれて見とれていたとでも言うのか?
失礼な!

「これ、9800円やけどな、よそやったら五万円はするで」

よ、よ、よそ!?
あんた以外にこんなもの売ってる人があるのか?

「な、安いやろ」
彼は勝ち誇ったように言った。

「材料、ただやもん」