若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

夏祭り

今日は、母が入っている施設の夏祭りである。

駐車場にいろんな屋台が出て、縁日風になる。
入居者たちは、浴衣を着せてもらう。
浴衣を着た母を見て、うれしいかというと、正直言ってうれしいとは思わない。
浴衣を着せてくれる職員さんたちが大変だなと思う。

今年で10回目である。

私がはじめてこの夏祭りに参加した時、Aさんという、80くらいの小柄な女性が近づいて来て、あたりをはばかるように私に声をかけた。

「アンタにこんなこと聞いてなんだけど、裏のおばあさんの葬式んとき、香典いくら包んだの?」

ここでは、答に窮する質問をされることがよくある。

話をしていると、Aさんは岡山生まれで、長く小学校の先生をしておられたらしい。
私は、岡山に関する話題は一つしか持っていない。
高校の時、美術部の合宿で、日生という港町に行ったということだけである。

私の切り札を出してみた。
Aさんは、日生の小学校でも教えたことがあると言われた。
ほんとかいな、と思った。

「日生に、『あたま島』という島がありますね」と聞いてみた。
「頭島」と書いて、「かしら島」と読むのであるが、わざと間違ってみたのである。

Aさんは、おかしそうにアハハハと笑って、
「アンタ、あれはねェ、『かしらじま』て言うんよ」と言われた。

この夏祭りで、何年か前からカラオケ大会が開かれるようになった。
そして、私が「鹿せんべいツイスト」のCDを作ってからは、ゲスト出演を依頼されるようになった。

初めて施設にCDを持って行って母に聞かせたとき、この施設の職員さんの中でも私が最も信頼する、「主任」格の、いかにも介護のプロという感じのKさんという女性がいっしょに聞いてくれた。

曲のはじめに流れるホルンを聞いて、Kさんは目を細めて、母に向って
「ま〜〜、きれいな曲ですね〜!」と言った。

そして、私の声が聞こえると、目をぱちくりさせて、アハハハと笑い出したのであった。

去年は、女性職員が四人で、「鹿娘」という、奈良の地酒みたいな名前のグループを作って、バックで踊ってくれた。一昨年は、「飛鳥ガールズ」であった。

今年は出演依頼がなかった。

去年、張り切って、サングラスにキンキラキンの衣裳で出演して、入居者の皆さんを不安に陥れたのがまずかったのかなと反省している。