若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

暑い

夏が来れば思い出す。
はるかな尾瀬ではない。
大学一年のときのアルバイトである。

とにかく暑かった。
塗装工場の現場で働いた。トラックに乗って、配送を手伝うこともあった。
日給600円であった。

四十年近く前のことで、トラックにはクーラーがついていなかった。
暑かった。
今なら、パレットにつんでフォークリフトで積み込むような作業を、人力でしていた。
暑かった。

Nさんというおじさんと、積み込み作業をしていた。
サッと風が吹いた。
Nさんは
あーすずし!ひと吹き千両やなあ!」と言った。

私は、ふっる〜!と思った。

Mさんという運転手は、配達の途中、よく自宅に寄って一服した。
そんなとき、奥さんは私にいつも、ワタナベの粉末ジュースを出してくれた。
粉末のままじゃないですよ。

塗装現場に、当時の私から見れば、「おばあさん」が働いていた。
あるとき、「おばあさん」が私に言った。
「あんたら、一晩寝たら疲れが取れるんやろな〜。わたしら、アカン。一晩寝ても疲れが取れんのよ」と言った。
息も絶え絶えであった。

私は、気の毒に、この人はもうすぐ死ぬな、と思った。
しかし、その後少なくとも二十年は、その工場で働いていたようである。

夏休み中働いて1万8千円だった。

最後の日に、経理の中年女性が
「冬休みもおいで。もう経験者やから、日給650円にしてあげるわ」
と言った。

私は、冬休みもその工場で働いた。
最終日、彼女から給料をもらった。
「日給600円やから、合計・・・・」

私はムッとしたが、何も言えなかった。

向井さんという女性です。
和歌山の人です。