若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

これが伝統の祭なのか??

雑木林の中で、重箱をひろげた村人たちは、一人ぽつんと座って眺めている私を無視して飲んだり食べたりしていた。
人間として、こんなことができるものだろうか?
憤りに近い感情がこみ上げてきた。
ワシは腹ペコなのじゃ!

そのうち、私の気合が通じたのか、おじいさんとおばあさんが私のほうを見た。
二人が何か言った。
すると、その時初めて私の存在に気づいたと言わんばかりに、皆がいっせいに私のほうを見た。

白々しいではないか!

おじいさんが私に手招きをした。
私は、すっ飛んで行きたかったが、悠然と腰をあげて悠然と近づいていった。
そして、「やあやあ、村の衆。おそろいでお楽しみですな」的笑顔を浮かべて、皆さんを見回した。
若い娘はいない。青年もいない。

おじさんが、いっしょに食べんか、と言った。
私は、「イヤ、そんな・・・」と言いながら、さっと重箱に手を伸ばした。
そのとき、おばあさんが、「箸がないワ」とボソッと言った。

箸!
そんなもんどーでもええがな!
手づかみじゃ!

おじいさんがうなった。
「う〜ん・・・箸がないか・・・」
皆が口々に、箸がない箸がないと騒ぎ出した。
なんと、各自の箸を持って来ているだけで、割り箸もないのだ。

そのとき、おじいさんが、「うん」と言って立ち上がった。
ポケットから小刀を取り出すと、後ろの木の小枝を二本スパッと切って私に差し出した。
「これでええじゃろ」

きゃー!
箸の代わりに小枝!
すばらしー!

私は、小枝の箸で重箱を突っつきまくった。
酒もすすめられた。
非常に甘口の酒であった。

この祭は、諏訪大明神にこのあたりの山々を見回ってもらって、安全をお願いするものだと言う。

酒を飲みながらおじいさんたちと話す。
私が大阪出身だと言うと、戦前大阪に行って、道頓堀のにぎやかさに目を回したと言うおじいさんもいた。