祭の話がなぜこんなに長くなるのか。
書いているうちに次々に思い出すのである。
こんなどうでもいいことをなぜ覚えているのであろうか。
おじいさん達にお酌をして回るように言われて、私は一升瓶を下げて酒をついで回った。
おじいさんたちは色々話を聞かせてくれた。
今思えば、おじいさんと言っても六十代だったのだろう。
この村には、苗字が二つしかない。(何と何か忘れた)
昔はどの家にも馬がいたので、子供達も含めて全員が馬で参加した。
戦前は、兵隊に行った若者たちが祭に帰って来て、馬にまたがって進軍ラッパを吹き鳴らして山を駆け巡って、大変勇ましかった。
馬を飼う家がだんだん少なくなって、村に一頭しかいなくなった。
その馬に神主さんが乗っていたのだが、去年その馬が死んでしまった。
神主さんを歩かせるわけにはいかない。
しかたがないので、去年は神主さんに耕耘機に乗ってもらったが、村人の間から、いくらなんでも耕運機はまずいと言う声が出て、今年は、よその村から馬を借りてきた。
おじいさんたちの話を聞きながら、酒を酌み交わして、酔っ払ってしまった。
男の子達が村に帰るという。
私も一緒に帰ることにした。
おじいさん達は、もっと飲んでいけと言ってくれたが、昼食にも戻らないで、クラブのみんなが心配していると思ったのである。
子供達は、元の道を引き返さなかった。
ほこらの裏に細い急な道があった。その道を通って降りて行った。
近道なのだろう。非常に急な下りであった。
酔っ払って、木のサンダルの私は、なんとか子供達について行くのが精一杯であった。
しばらく行った所で、先頭のリーダー格の男の子が、「行くぞ!突撃!」と叫んだ。
「オーッ!」と子供達が声を上げた。
「ワーッ!」という喚声もろとも、子供達は山の斜面をものすごい勢いで駆け降りだした。
ひえー!待ってー!
こんな所で遭難してなるものかと、私は必死の思いで子供達を追いかけた。
民宿の木のサンダルを気楽にからころと鳴らしている場合ではなかった。
民宿にたどりついたときは息も絶え絶えであった。
皆は、私が湖に落ちたのじゃないかと心配していたらしい。
長野県の、松原湖畔(?)の村の祭の話です。