新聞に英語上達法の広告が出ていた。
いろんな上達法がある。
昔、各界の英語の達人と言われる人たちの「英語上達法」を読んだことがある。
皆さんがすすめておられたのは、中学の英語の教科書を繰り返し声を出して読むというものであった。
実に単純な話である。
残念ながら、人間というのは、こういう単純なことができないのですね。
で、「画期的上達法」ということになる。
今日見たのは、「中国語、英語同時上達法」というものである。
日本人は漢字を知っている。ということは、中国語は少しわかる。日本人は、中学から英語を習っている。ということは、英語も少しわかる。
この少しわかるものを同時にやれば、相乗効果で両方どんどん上達する、という理論である。
試してください。
英語といえば、大学の時の原田君を思い出す。
名前だけ覚えているのである。
英語しか使ってはいけない授業があった。
先生が、原田君に名前を尋ねた。
彼は起立して叫んだ。
なんと叫んだかわからなかった。「ハラダ」とは言わなかった。
先生は、「What?」と言われた。
私も心の中で、「What?」と言った。
一瞬の後、私は理解した。
彼は、なにを勘違いしたのか、自分の名前を英語らしい発音で言ったのである。
米語らしいと言った方がよいか。
ふつうに「ハラダ」ではなく、「ラ」に物凄いアクセントをつけて、しかも「R」であることを強調して叫んだのであった。
「ハーウ、ルアッ、ドゥワアー!」と叫んだのだ。
「What?」
「ハーウ、ルアッ、ドゥワアー!」
「What?」
問い直されるたびに、彼の勘違いはエスカレートして、彼の米語式発音もエスカレートして、ますます何を言っているのかわからなくなった。
自称カリフォルニア生まれ、日系三世の結婚詐欺師、という感じです。
「ミーのグランファーザーが、ヒロシマからキャーフォーニャーへ、イミーグランしよったン。ミーはファーマーじゃ。メキシカン使こうてグレイプやストロベリ作りよる。ミーの名前?ハーウ、ルアッ、ドゥワアー!」
日本の女性、イチコロですよ。
原田君ですか。
最後は、蚊の鳴くような声で、「ハラダ」と言いました。
強烈に印象に残っているので、私は臨終の際、「ハーウ、ルアッ、ドゥワアー!」とつぶやくかもしれない。
不審に思うであろう妻子のためにその由来を書き記すものなり。