朝日新聞「天声人語」
イギリスの人が、イギリスやアメリカで見かけたヘンな看板を集めた本を紹介している。
「この看板に石を投げないでください」
こういう看板があるという。
投げてほしいのだな。
修理屋のドアの看板。
「何でも修理します。ベルが壊れているので強くノックしてください」
客を寄せ付けない看板である。
ウチの近所の食料品店の看板は、横一行に書いてあるけれど、書いてあるボードが三つのブロックに分かれている。
「無農薬」「野菜有」「機栽培」
これは、「無農薬野菜、有機栽培」と書いたつもりだろう。
私は、いつ見ても、どうしても
「無農薬野菜有」までの2ブロックを一気に読んでしまう。
そう読んでしまうと、あとの「機栽培」が、困った立場になることはわかっているのだが、そういう読み癖がついてしまっているのだ。
去年、近所の布団屋さんが廃業した。
自宅の一階が店で、住宅地のなかでよくやっていけると思っていた。
廃業する半年ほど前、張り紙に気づいた。
「私、この地で○年間営業を続けてまいりましたが、刀折れ矢尽きて、このたび廃業のやむなきに至りました」
のんびりした商売だと思っていたが、壮絶な戦いだったようである。
半年前から予告するというのも凄い。
先日、会社の自動車の修理を頼んでいる店の主人が引退して、古くからの従業員に店を譲るという通知が来た。
「私、このたび従業員○○に商道を譲り・・・」
このおやじさんが、「華道家元」という感じである。
新聞屋さんの従業員募集の張り紙に変なのがあった。
通りに面してガラス戸がある小さな店である。
そのガラス戸の張り紙。
「従業員募集!
水滸の士よ!
この門をたたき給え!」
門なんかない。
「水滸の士」とは?
水滸伝に出てくるような、英雄豪傑?反政府ゲリラ?山賊?
なんか、やけくそになって従業員を募集しているようであった。
どんな主人か?
この張り紙を見たら、皆怖気づいて帰ってしまうと思う。