バス停に掲示板がある。
いろんな張り紙がある。
「夏休みに太極拳をしませんか」
「合唱団員募集」
一番多いのが、「犬を保護しています」「犬を探しています」というものだ。
何ヶ月も前から、「犬を保護しています」というAさんの張り紙がそのままになっている。
この人は、警察に保護された犬が保健所送りになるのを貰い受けてきたのだ。
家には同じような犬がたくさんいるので、この犬を誰か引き受けてほしいとお願いしている。
今朝、その隣に新しい張り紙があった。
最近は、パソコンで作った、カラー写真入りが主流だ。
「迷子犬」
張り出したのは、奈良西警察署だ。
親切ではないか。
「保護期間:8月23日から8月29日まで」
親切のような冷たいような表示だ。
これをこの場に張るというのは、なんとなく、Aさんに対する挑戦というか、嫌がらせというか圧力のようなものを感じる。
「犬種:?
年齢:?」
年齢はともかく、「犬種」くらいは分からんのか。
写真を見ると、「むく犬系」だ。
写真の下に説明がある。
「ずぶ濡れ状態の写真です」
理解に苦しむ説明だ。
保護した時、「ずぶ濡れ」だったのか。
乾いてから写せばよいではないか。
警察に電話して聞いてみた。
拾得物係の説明では、「現状のまま保管」という規則があるので、ずぶ濡れで保護した犬は、乾いたらまた水をかけてずぶ濡れにするということであった。
いくら規則でも水をかけるのはあんまりではないか、と言ったが、「規則ですから」の一点張りだ。
押し問答の末、「水掛け論はやめましょうと」と言われてしまった。