若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

「乞食お断り」

イギリスのベストセラー小説『ハロルド・フライのウルルン礼記』、読み終わりました。

さえない定年退職おじさん、ハロルド・フライさんが、昔の同僚で、今は末期ガンで余命幾ばくもない女性を訪ねて、イギリスの南の端から北の果てまで歩いていく話です。

英語の本を読みたい方にはおすすめです。
私程度の英語力があって、わからないとろこは五行でも十行でも平気で読み飛ばすことができて、前後つながらなくてもそれほど気にならない人だと、わりと楽に読めます。

そういう読み方をしてると、テーマについては気になりませんが、細かいところが気になります。

物語の終盤、女性のいるホスピスの近くまでたどり着いたハロルドさんが、カフェに入っていきます。
二ヶ月以上歩き続け野宿し続けて、髪の毛はクシャクシャ、ヒゲはボウボウ、服はどろんこです。
そのハロルドさんが、カフェの店員に、「一銭も持ってないんですけど水ください」というんです。

水を持ってきてくれた店員に、「すんませんけど、ひげそりとクシを貸してもらえないでしょうか」といったら、店長が出てきて、さっと指さしたんです。
見ると、「乞食お断り」という張り紙です。

イギリスには、そんな張り紙があるのかと感心しました。
日本なら、「両替お断り」くらいですよね。

本の最後に、「リーダーズ・ガイド」というのがついてます。
親切である。
日本の文庫本の、「解説」というやつですね。

まず、著者の対談。
著者のレイチェル・ジョイスさんは、元シェイクスピア劇の女優で、その後ラジオドラマを書くようになって数々の賞をもらって、この最初の小説がベストセラーになったようです。

対談相手は、シャーロット・ローガンさんで、この人もベストセラー作家のようです。
二人でほめあってます。
ベストセラー作家二人がほめあうのは美しいと見るかうっとうしいと見るか、意見の分かれるところだと思います。

この小説を書く事になったのには、著者のお父さんがガンで亡くなったという体験が影響してるようです。
辛い手術を経て、医者から打つ手がないと宣告された。
お父さんにとっても著者にっても衝撃的であった。
何もできなかった自分を責める気持ちがあったようです。

対談の最後もガンの話です。

この本を書いてから、著者の愛犬がガンになった。
ベストセラーになって、カナダに宣伝に行くことになった。
著者は、戻ってくるまで生きていて欲しいと思ったけど、ダメだった。

対談の最後にもってくるということは、「オチ」というか「シメ」なんでしょうね。

著者は、ラジオドラマでいくつも賞を取ったけど、作者のことも作品のことも話題にもならなかった。
小説が売れた途端に、注目の的になって戸惑ってるようです。

対談の次に、「この作品について考えてみよう」というような「おまけ」がついてます。
「主人公はどうして旅に出たんだと思いますか」みたいな質問が並んでます。
国語の試験みたいである。
いたれりつくせりである。
イギリスは読書クラブが盛んらしいですから、そういう人たちのためのものでしょうか。

最後の質問。
「この本は世界的ベストセラーになってます。台湾、ドイツ、イギリス、オーストラリア、アメリカ、イタリア、南アフリカその他多くの国々で、主人公ハロルド・フライが共感を呼んでいるのはなぜだと思いますか」

私の英語力では、「知らんがな」と答える他ないのは残念である。