若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

渋滞

仕事の帰り、駅から乗るバスは時々遅れることがある。
駅付近の道路が渋滞するからである。

ホンダの創業者、本田宗一郎さんは、「渋滞」を認めていないようであった。
生前、何かの番組で熱弁をふるっておられた。
「人間は、行きたいと思った時にどこへでも行けるのが一番いい!それには自動車ですよ。え?渋滞の時困る?なんだっ!渋滞って!?私は『じゅうたい』とは読まない!『しぶおび』って読んでやるんだ!」

わけのわからんおっさんだと思った。

数学者の秋山仁さんが、十数年前、モンゴルに行った時の話。
モンゴルの大学を訪問すると、「コンピュータ学部」という部屋があったので入ると、コンピュータはなくて、本だけで勉強していた。
学生が、秋山さんの仕事はどんなところで使われているのかと質問した。
秋山さんは、わかりやすい例として、交通信号の自動制御に使われていて、渋滞を減らすのに役立っていると答えた。
ところが、モンゴルの学生たちには、「渋滞」がわからなかったらしい。
車が多すぎて動かないということが想像できなかったそうである。

駅でバスを待っていると、定刻の十分遅れでやって来た。
ごくまれに、文句を言う人がある。
決まっておじさんである。
六十過ぎの、背広を着たふつうの人であった。

運転席に行くと、運転手に向かって
「遅いじゃないか!」と言った。
「すみません。渋滞なもんで」
「渋滞?他の系統のバスは来とるやないか!同じ道路を走ってて、どうしてこのバスだけ遅れるんや?」

こういうときに文句を言う人は、何を考えているのであろうか。
バスがどこかへ寄り道してたとでも言うのか。

運転手はしきりに謝っていた。
おじさんは責め続けた。
「私は運転だけしてるもんで、これ以上は営業所の方で・・・・」

なんと、おじさんは、携帯電話を取り出して、走るバスの中から営業所に電話をした。
しょっちゅう電話をしているのではないか。
営業所では、「またこのおっさんか」と思ったのではないか。

「運転手は渋滞やと言うんやけど、他のバスは十分の間に三台も来てるんや。同じ道路を走ってるんでしょ!なぜこのバスだけ遅れたのか、納得いくように説明してほしい!」
えらい剣幕である。

バス停で降りる時も、運転手に何か言っていた。
困った人である。