若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

才色兼備

今日は、親戚の青年の結婚式である。
なかなかの好青年なので、いっそう目出度く感じる。

結婚式の挨拶で記憶に残るものは少ない。

知り合いの娘さんの結婚式での挨拶は、その数少ないものの一つである。
その娘さんは、小学校の頃から、勉強が出来なかったようだ。
中学、高校の頃は、ちょっと大変だったみたいである。
父親が、自分の娘の結婚相手の男性がかわいそうだと言うのだから、よほどのことである。

娘さんが某女子大に入学した時、父親は、「ウチの娘を入学させるなんて、大学の良識を疑う」と憤っていた。

彼女の結婚式には、大学の恩師が招かれていた。
私の隣の席であった。
いかにも謹厳実直という感じの老教授であった。

教授が、挨拶に立たれた。

「ご覧のとおりの才色兼備のお嬢さんです」程度なら、記憶に残らない。

教授は、教え子の中でも、特に優秀な学生であったと言われた。
「社会経済史」を専攻され、と言われた。

卒業論文のテーマとしては、「日本自動車産業史」を選ばれた、と言われた。

卒業論文の作成に当たっては、ただ、参考書を読むだけで満足せず、関連企業に足を運び、実地に調査にあたり、と言われた。

綿密な調査から得た膨大な資料を駆使して、学術論文と言っていいほどの、実に立派な卒業論文を完成されたことは、私の長い教員生活の中でも、特に印象に残っている、と言われた。

どんな顔で挨拶しているのか。
私は、教授の顔を見た。
先ほど見たままの、謹厳実直そうなお顔であった。

挨拶が終わると、教授はグッタリと椅子にもたれて、目を閉じたままじっとしておられた。
食事もほとんどとられず、私は、ビールでもすすめようかと思ったが、声をかけるのもはばかられるご様子であった。
披露宴の間中、ずっと放心状態で目を閉じて椅子にもたれておられた。

お見かけしたとおりの、誠実な方なのだなと思った。

今日の結婚式はどうだろうか。