若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

息子の写真を見てください

電車内のポスター。

奈良県知事と衆議院の選挙の投票を呼びかけるポスターである。
テレビで見かける筋肉隆々の若い芸人さんが、力こぶを見せびらかしてにっこり笑っている。

三十年ほど前、母が入院した時、付き添いのおばさんを頼んだ。
小柄で口数の少ない、いかにもその道のプロという感じのおばさんであった。
ご主人をなくして、女手ひとつで一人息子を育てたと話した。

ある日、「これ、息子なんです」と、いかにも遠慮がちではあるが、見せたくてたまらないという感じで写真を差し出した。

写真を見て驚いた。
非常に小さな水泳パンツ(?)ひとつの筋肉モリモリモリモリ!の若者が、「オリャッ!」と気合を込めて、キメのポーズで私に向かってにっこり笑いかけているではないか。

おばさんは、控えめな微笑を浮かべて私の反応をうかがっていた。
今なら、「おー!すごいですねー。かっこいいですねー」くらいは言えるが、三十年前の私は、言葉も無くボーゼンと写真を見つめるばかりであった。

大学時代、休みが終わって大学に戻る新幹線でのこと。
私の隣におじいさんとおばあさんが座った。
何かと私に話しかける。
今も無口で内気な私であるが、当時は今以上だったので少々迷惑であった。

大阪で仕事をしている息子に会いに来たという秋田のお百姓さんであった。
人のよさそうなおじいさんが、胸ポケットから写真を出して、「これ、ウチの息子です」

写真を見て驚いた。
体操服の若者が、はしごの上で片手で逆立ちをしていた。
舞台でアクロバットをしているそうだ。

やはり大学の時、大阪に帰る新幹線で同じようなおじいさんおばあさんと隣の席になった。
やはり何かと私に話しかけるので、少々迷惑であった。
今にして思えば、息子と似たような若者、と思われたんでしょうなー。
まともにお相手できず、申し訳なかったです。

息子さんは自衛隊員で、札幌の雪祭りに招待してくれたのだと言う。
広島のお百姓さんであった。
雪祭りは素晴らしかったと言われた。

人のよさそうなおじいさんが、ポケットから写真を出した。
また息子の写真か。

「これ、ウチの息子の・・・」
自衛隊の制服姿もりりしい若者だろうと思って写真を見て驚いた。

鎧兜の武士の雪像であった。
「こ、これ、息子さんですか!?」
「い、いや、息子達が作ったんです」