高校の美術部の二年後輩のM君から個展の案内をもらった。
M君は、ずっと絵を描きつづけているが、個展の案内をもらうのは、初めてのことである。
昔と同じような抽象画を展示していたが、四十年描き続けているだけのことはあると思った。
よかったよかった。
昔から、私はM君といっしょにいると、私のほうが後輩だと思われた。
私は、ボブ・ディランにならって「younger than yesterday」をモットーにしてきたので、M君との差はますます開いて、今や彼は私の大先輩という感じである。
それでも、M君は、高校一年で美術部に入ってきたときのままに見える。
私も、高校三年生のような気になる。
これはもう一体何がどうなっているのかわけがわからん。
私は、ビートルズが好きで、特にビートルズのデビュー間もないころの写真を見るのが好きだ。
見ているだけで、何となくうれしい幸せな気持ちになる。
自分の元気の良い無邪気な青春時代を思い出すからだ、という解説がありうる。
しかし、当時の自分の写真を見ても、うれしい幸せな気持ちにはならない。
自分が、それほど元気よくもなく無邪気でもなかったことがわかっているからだろうか。
当時の、友達の写真を見ている方がうれしくなる。
現在の変わり果てた姿と比べて、「あいつも可愛らしかったなー」と思ってうれしくなる。
自分の高校時代の写真を見て、可愛かったなーと思うことはない。
今の方が可愛いです。
夕方テレビを見ていたら、ミシェル・ブランチという若い女性歌手が出ていた。
通訳などという野暮なものはいなくて、彼女がしゃべると日本語字幕が出る。
すっきりしていてよろしい。
彼女が歌う前に何かしゃべったが、その字幕が
「では、『***』を歌わせていただきます」
と出た。
ほんまか!?
ほんまに、ミシェル・ブランチが
「歌わせていただきます」と言うたんか。