若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

ゼロ君の呪文

帰りのバス停。
ベンチがあって、昼間だとお年寄りが腰を下ろしてバスを待っている。
昨日は、無人のベンチに、竹のつえが一本ぽつんともたれていた。

置き忘れられたつえ。
わびしいようなおかしいような光景であった。

小さな女の子の声がするので振り向くと、幼稚園の制帽をかぶった子が二人、母親に何か言っている。
二人は後ろ向きで顔は見えない。
襟と裾に毛皮のついたおそろいの長いコートを着ている。
「小公女せーラ」に登場する憎まれ役みたいな格好である。
好感が持てない。

母親は、同じようなコートを着たヤングミセスである。
通りかかる年配の女性達が、子供達の顔を見ては、にっこりしている。
それを見て、ヤングミセスは、鼻高々と言う感じで
「ワタシの子供達、かわいいざましょ!ついでにワタシも美人ざましょ!」
と言わんばかりである。
好感が持てない。

子供達がこちらを見た。
きゃー!かわいい!
しかも双子だ!

私は、積もりに積もったうらみつらみを忘れて、思わず、
「奥様!お嬢様たちとってもかわいいざます!」
と叫びそうになった。

私のかわりに、後ろにいた70くらいの女性が言ってくれた。
「まあ!なーんてかわいいんでしょ!」

ドラマのせりふみたいやな〜、と思ったが、ヤングミセスは極めて満足そうであった。

朝刊のミニ新聞読者欄。
「探しています」
「○○市で、園芸と散歩が好きな五十代の専業主婦でお友達になってくださる方」

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「特集:スポーツ漫画200選」
200!

スポーツ漫画といえば、「巨人の星」と「明日のジョー」なのだろうが、連載中、両方とも私は嫌いだった。
誰がなんと言おうと、とにかく嫌いだ!

私にとって初めてのスポーツ漫画は「背番号ゼロ」である。

小学生の野球チームに、「ゼロ君」というヘタな子がいる。
どういうわけか、「野球の神様川上選手」がコーチしてくれる。
すると、ゼロ君は素晴らしく打つようになる。

皆が不思議がる。
「ゼロ君、打つときに何かおまじないを言ってるぞ」

ゼロ君猛打の秘密は、川上選手直伝の呪文だったのだ!

その呪文とは!?
「テミクヨ!」

ヨ、ヨ、よく見て・・・
すばらしー。

どうしてこんなしょーもないことを覚えているのか、私の脳に聞くまでもない。
バッターボックスに立つとき時、私はこの呪文を何度も唱えたからだ。