若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

セールスマンを断る

会社にいろんなセールスマンが来る。

私は、断るのが得意だ。
父譲りである。

父は、セールスマンが自己紹介すると
「いらん!用ない!」
と背中を向けた。

私が、あんまりではないかと言ったら、悪いから聞くだけ聞いて上げようというのは失礼だし、お互い時間の無駄だと言った。
なるほど。

星新一さんの小説にこんなのがある。

未来社会、人は皆、肩にオウムを乗せている。
セールスマンが家庭を訪問して出てきた奥さんに、「これを買え」と言う。
肩のオウムが、「奥さま、お忙しい所恐縮でございますが・・」
奥さんが、「いらない!」と言う。
肩のオウムが、「あら、おたくの製品は素晴らしいわね。でも・・」

明治生まれの父の断り方を、戦後生まれの私なりにアレンジして断っている。
基本は、「いらん!用ない!」である。

ニッコリと、冷厳たる拒絶の意思を表す。
ほとんど全員、二の句が継げず退散する。

十年に一人くらい、くいさがる馬鹿がいる。
私をなめているのである。

昨日の昼、若い女性が入ってきた。
一目見て、この子はおかしい、と思った。
不気味な無表情さだった。

電話料金が得になると言う話を始めた。
何とも言いようのない、抑揚のない話かただ。
私は断った。

驚いたことに、私の言葉が聞こえないかのように、完全に無視して、一方的に話を続けた。
もう一度はっきりと断った。
またもや彼女は知らん顔で、「で、こちらのシステムですと・・」

私は、話を聞く気がないから出て行くように厳しく言った。
やっと彼女の表情が変わった。

そして、バインダーの分厚い書類を見せて
「この申込書の件で来ているんですが」と言った。
我が社のゴム印と角印が押してある申込書のコピーだった。

「今年の一月に申し込んでいただきました。ご近所を同じように回っています」と言って他の申込書を見せた。
近所の会社の申込書が沢山あった。

私は怒鳴りつけて追い出した。
十年程前、似たようなことがあったのだ。
勝手に雑誌を送りつけて、集金に来たので、断った。
すると、ゴム印を押した「購読申込書」を見せたのだ。
その時も、近所の会社の申込書が沢山あった。

どういう手段でか、会社のハンコの印影を入手して、「申込書」をでっち上げて金を取ろうという「商売」があるのだ。
それにしても、気味の悪い子だった。