若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

えらくない人

「えらい人」で思い出すのは、何年か前、亡くなった伯母の土地の測量に立ち会ったときのことだ。

役所の図面と現状がかなり違うので、今の内に測量しなおそうということになったのである。

伯母は、大阪近郊とはいえ、「ムラ」的雰囲気が非常に濃厚な地域に住んでいた。
伯母は、自分の土地の一部をAさんという人に貸していたので、関係者はAさんと私だ。

ところが行ってみると、Aさんと市役所の制服を着た人の他に十人ほどの男がいた。
「ムラ」の人たちはヒマなので測量の見物に来たのだろうと思った。

測量が始まると、集まった人たちがぶつぶつ言い出した。
Aさんが何年か前家を建て替えた時、なんと2メートルも農道へはみ出して建てていたのだ。

非常にもめている。
市役所の人が知らん顔なので、私は、間に入ってあげたらどうですか、と言った。
市役所の人は、「ムラのことはムラで決めてもらわんと」と答えた。

なるほど、それが地方自治か。

Aさんは日ごろから村の中で浮いていたようだ。
村人達は、はみ出した部分を取り壊せ、と強硬だ。

もめているところに、老人が現れた。
一目見て、「えらい人」だな、と思った。
ベンツに乗って現れたわけでもなく、ロレックスの時計が光っていたわけでもなく、ふつうのおじいさんがサンダル履きで現れたのであるが、「えらい人」だとわかる。

双方の言い分を聞いた老人は、図面には現状を無視して農道を正しく記載すること、次回Aさんが建て替える時は2メートル引っ込めること、と宣言した。

村人達は不満そうだったが、宣言を聞くと黙ってしまった。
このムラはうまくいっていると言えるのだろう。

「えらい人」がいれば「えらくない人」もいる。

娘達が3、4才の頃だ。
長女が、ウチで一番えらいのは誰?と聞いた。

「誰やと思う?」
「パパかな?あ、おじいちゃんやな!次がおばあちゃんで、その次がパパかな」

聞いていた次女がぱっと顔を輝かせて叫んだ。
「いっちばんえらくないのがワタシ!」

我が家もうまくいっていたと言えるだろう。