若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

百人一首

季節外れの話題のようだが、母のいる施設でのことなので、そこでは、時間が極めてゆっくり流れていると言うか、止まっているというか、渦巻いていると言うか、逆流していると言うか、季節はあるようなないような感じなのである。

それだけに、施設の側では季節感を出そうと気を配っている。
昨日行ったら、鯉のぼりがたくさん飾ってあった。

職員さんが紙で作った菖蒲の花の上に、半紙に「鯉のぼり」の詩が書いてある。
「やねよりたかいこいのぼり」

怪力女性Yさんの字だ。
達筆である。
文字の散らし方といい、ほとんど「書道芸術」と言っていい。

ただ、最後の「およいでる」が、「およいじる」になっていたのが、残念と言えば残念、面白いと言えば面白い。

もう一人のYさん。
先日は、「南無大師金剛遍照。ありがたいありがたい」と手を合わせておられたが、昨日は半紙のようなものを見ておられた。

見ると、百人一首がずらりと書いてある。
かなり大きな字で一行に書いてある。
Yさんは目は良くて字は読める。

Yさんに声をかけた。
「これ、見えますか?」
「どれ?、あ、これ?
『あしひきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜を一人かも寝む』」
「これはなんですか」
「え?」
百人一首ですね」
「いえ、ちがいます。これは百人一首とはちがいますね。
百人一首は面白いですよ。昔は全部暗記してましたけど、もうダメやね。忘れてしまいました」
「はー・・これは、百人一首ですよね」
「いえ、これはちがいます」

Yさんはまた一行ずつ目で追っている。

「これ、見えますか?」
「これ?
『あまつかぜ雲の通い路ふきとじよ・・・』」
「これは百人一首ですね」
「いや、ちがいます。百人一首とはちがいます。百人一首は面白いですよ」

これはいったいどういうことか。
一度ならず二度までもきっぱりと否定するとは。
何だか分からなくても、「ハイ、百人一首です」と適当に合わせておく方が楽だと思うのだが。
否定するのは結構エネルギーが要ると思う。

Yさんは、非常にしっかりした方だったらしい。
「しっかりしていた」名残が、「否定力」なのだろうか。