中高年男性向けの雑誌の広告。
こっそり6歳若返ることができる、五十路の男のための美顔術を紹介している。
私なんかをターゲットにした特集だ。
道行く人が振り返るようになると書いてある。
振り返られたくない。
道を歩いていて、すれちがった人がパッと振り向いた時、ムハハ、6歳若く見えたんだな!なんて喜ぶか?
振り向いた人を追いかけていって捕まえて、
「あなたは私のことを52歳と思いましたね!ちがいます!58歳なんですよ!ホントです!ここに戸籍謄本と印鑑証明が!」
ふつう、振り返られたりしたら心配になるのではないか。
「アレ、髪の毛が逆立ってるのかな」
「口のまわりにさっき食べた骨付きステーキの骨がくっついてるのかな」
色々考えてしまうので、私は振り返られたくない。
それに、なぜ「こっそり若返る」?
堂々と若返ればいいと思う。
「私は若返ります!」と宣言して若返ればよろしい。
いずれにせよ、私には特別な美顔術は必要ない。
すでに「オロナイン美顔術」を実行しているからだ。
私は物心ついた頃から、朝夕「オロナイン軟膏」を顔にすり込んできた。
オロナイン一筋50年だ。
そのおかげで、人もうらやむ「ウルトラルーセント美白赤ちゃん肌」を維持できている。
切り傷、すり傷、引っかき傷、打ち傷、刺し傷、鉄砲傷、軽機関銃による傷までオロナインだ。
とにかく肌にはオロナインだ。
私はいつもオロナイン軟膏を持ち歩いている。
仕事などで、肌のあわない人に会ったとき、私はその人にオロナイン軟膏を塗る。
いやがって逃げ出したら追いかけて塗る。
塗っているうちにその人はおとなしくなる。
とにかく肌にはオロナイン軟膏だ。