若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

朝日新聞に問う

自転車泥棒」と言えば、ビットリオ・デシーカ監督の傑作だ。

第二次大戦直後のイタリアの、貧しさゆえの悲劇を描いている。
「四百四病の病はあれど、貧ほど辛い病はない」という、浄土真宗のお説教の一節を思い出す。

今朝の朝刊。
奈良市内の交番に、自転車に乗った男が現れ、「カバンを盗まれた」と届け出た。
応対した警官が、盗難届けを書かせると、男は住所欄に「住所不定」と書いた。

「なに!住所不定!?ふてー野郎だ!」と言ったかどうかは知らんが、不審に思った警官が男の自転車を調べると、盗難届けが出ていたものだと分かり、男は窃盗容疑で逮捕された。

調べに対して男は、カバンを盗まれてあんまり腹が立ったので、前後見境もなく交番に届けてしまったと供述したそうだ。

傑作だ!

巨匠ビットリオ・デシーカ監督作品に勝るとも劣らぬ傑作だ!

怒りに燃えた男が、盗難届けに勢いよく「住所不定!」と書き込むシーンが前半のクライマックスだ。

さて、朝日新聞に聞きたい。
なぜ、この男のことを記事にしたのだ。

私は、たびたび朝日新聞のバランス感覚を問題にしてきた。
祖父の代から愛読している朝日新聞の報道が偏向しているという批判を目にするたびに心を痛めているからだ。

これは、自転車泥棒の記事なのか。
窃盗事件として取り上げたのか。
ふつう「自転車泥棒」は記事にならないではないか。

殺伐とした現代社会にあって、このようなほほえましい出来事もあるのだということで取り上げたのか。
この男をほめているのか。
ほめるとまでは行かなくても、面白がっているのか。

「ちょっといい話」なのか。
これを紙面に載せたネライがわからない。

この後、交番から知らせを受けた自転車の持ち主が現れたところ、手にしていたのは男が盗まれたカバンだったので、二人は取っ組み合いのけんかをはじめたそうだ。