先日の表彰式で講演があった。
演題は「多発する産業事故災害の概要と教訓」
式にふさわしい演題なのかもしれない。
最近は、この種の講演でも話すだけではなく、ノート型パソコンとプロジェクターをを使って、色彩豊かな画像を交えて視覚に訴えるものが多いので、それほど退屈せずにすむかというと、そうはいかない。
「色彩豊か」といっても、燃え上がる炎や、迫力ある放水シーンではなく、細かいグラフなどであるから、退屈さがカラフルになるだけだ。
目で見る退屈だ。
講師は、十勝沖地震による巨大貯蔵タンクの事故について非常に専門的な話をされた。
主催者側が講演を依頼する際、聴衆についてきちんと説明しなかったのではないか。
たしかに、集まっているのは、「危険物関係者」だ。
しかし、危険物といっても、灯油もあれば重油もあればガソリンもある。
だから、集まっているのは、運送会社、病院、鉄工所など、普通の会社の関係者がほとんどだ。
その私たちに、いきなり、「2次元応答解析法で求められたスロッシングの最大上昇量」などと言われても困る。
画面に、巨大原油貯蔵タンクの断面図が映し出された時、講師は、「本日お集まりの皆様方にはご説明するまでもないこととは思いますが」と言われた。
残念ながら、「本日お集まりの皆様方」のなかで、巨大原油貯蔵タンクについて知っている人はないし、興味のある人もいなかったと断言できる。
講師は、私たちのことを、石油コンビナートで巨大タンク群の安全を守るため日夜戦い続けているプロジェクトエックスの勇士達と思われているようだった。
こういう講演のあとは、司会者が、「何かご質問がありましたら」と言うものだが、何も言わなかった。
司会者も何の話かわからなかったからだと思う。
講演を聞いて、私は、よい声の人だなと思った。
感じのよい話し方だった。
私は、講師の所属する「独立行政法人消防研究所」に好感を持った。
こういう席に出ると、この社会は様々な職業の人たちによって支えられ運営されていることがわかるが、その人たちが何をしているかはわからない。
「スロッシング」というのは、タンクが揺れたとき、中の油が動く動き方なのだろうと思いました。