若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

箱根観光タクシー

昨日は、「ポーラ美術館」に行った。
収蔵作品、施設ともすばらしい美術館であった。

美術館へはタクシーで行ったのだが、さすが観光地だけあって運転手のガイド振りが立派なものだ。
「この箱根地区は、40万年前箱根山が大爆発した跡地です。本州では、三重県尾鷲地区に次ぐ降雨量で、独特の生態系をもっています」

運転しながらの行き届いた説明に、私が「運転手さん博学やねー」と感心したのでますます張り切ったか、「左を見てください。赤茶色の幹の木、あれが『ひめしゃら』です。今度は右です。お客さん、右ですよ。今は一面緑ですが、あれはススキで、秋には銀一色になります」と片手を放して指差しながらの説明。

箱根の山道、カーブの連続だ。

ハラハラしている間はまだ良かった。
だんだん熱が入って、外輪山を説明するのに、ハンドルから両手を放して輪を作るは、「2万年前、大湧谷の大爆発!ドッカーン!」と勢いよく万歳するのを見ては、スリル満点どころの話ではない。

「あ、運転手さん、カーブカーブ!」
「ハンドル!」
夫婦で叫びつづけた。

座席で手に汗握る私たちを尻目に、運転手はノリにのっている。
「せっかくですから、私からお土産、いえ、荷物にはなりません。聞いて下さい、『箱根音頭』

♪はあ〜、箱根八里は馬でも越すが
 越すに越されぬ恋路の関所
 通す手形をヤレホンニサくだしゃんせ
 ソレ、シャンシャンシャン♪」

いい声だ。

「じゃ、簡単ですから振り付け、覚えてってください。まず、最初のハアーで、右手を前に、左手はグルッと後ろへ回します。ハイ、だめですよご主人、ご主人も一緒に」
運転手がバックミラーで監視しているので、私たちは仕方なく、歌にあわせて、右手を前に出し、左手をグルッと後ろに回した。

「最後の、シャンシャンシャンは手をたたいて下さい。いや、そうじゃなく」
と運転手は完全に私たちの方を向いて、運転席から身を乗り出し、直線とはいえ急坂を猛スピードで下りつつ、
「シャーンシャーンじゃなくて、歯切れよくシャンシャンです。これ、馬の鈴なんですよ。お馬さんが上ってくる感じでネ、はずむようにシャンシャンシャンです。そうそう!その感じ!じゃ、アタマから通しますネ。
♪はあ〜、箱根八里は・・・」

5回通してやっとOKが出た時には、私たちはグッタリと疲れ果てていたのであった。