若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

二億円宝くじ

二億円の当たりくじを福井県に寄付したのは、芦屋に住む会社社長山田良夫さんである。

山田さんは今年6月、駅前の宝くじ売り場で生まれて初めて宝くじを一枚買った。
それが二億円の当たりくじであった。

「幸子、こないだ買った宝くじ、二億円あたっちゃったよ」
「あら二億円ですか。中途半端な金額ですね」
「うむ、どうするかな。おい、幸夫、お前ポルシェが欲しいって言ってたな」

長男の幸夫はマサチュセッツ工科大学を卒業後外資ベンチャー企業で研究員として働いている。
「いやだな、父さん。子ども扱いしないでよ。自分で買うよ。今度社長賞で150億円もらうんだ」
「ああ、あの青色ダイオードをしのぐ、レモンダイオードが完成したのか」
「レモンはすっぱいしたよ」
「えーかげんにしなさい!」
「ほんとにネッ!」
「オレンジダイオードだったか」
「いや、橙ダイオードだよ」
「ああ、橙ダイオードか。おめでとう。じゃ、幸代に二億円の指輪を買ってやろう」

長女幸代はハーバード大学卒業後、外資系金融機関で働いている。
「いやだわパパ。私みたいな若い娘に二億円の指輪なんてつりあわないでしょ。それに、今度私が決めたECの化学会社の合併で、私も社長賞80億円もらうの。ちょっと贅沢だけどそれで3800万円の指輪買うの。自分へのささやかなご褒美よ」

しかたなく、妻幸子の両親に何か欲しいものがないかと聞いたところ、幸子の父に、たまたまあたった二億円を家族のために使うような男を娘の婿に選んだ覚えはないと言われた。

しかたなく自分の両親に聞いたところ、やはり世のため人のためになるような使い方をするようでなければ、親でもなければ子でもないと厳しく叱責された。

そこで、両隣と向かいの家に、二億円の宝くじが当たって使い道に悩んでいると話したところ、どの家も我がことのように喜んでくれ、実は自分たちもどこかに一億円ほど寄付したいと思っていたので、ごいっしょさせて欲しいと頼まれてしまった。

「こまりましたわ。寄付すると言ったって、たいがいの所にはしていますものね」
「うむ、こうなったらどこかで災害が起きるのを祈るほかないな」
「まあ!あなたったら!」
「冗談冗談!わははは」
「おほほほ」