若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

ペットロス症候群

「ペットロス症候群」という言葉は、可愛がっていたペットが死んだ時、落ち込んでしまう状態を指すようだ。

中学一年の時の担任の先生のお父さんが、動物の人形のコレクションで有名な人だった。
何度か新聞でも見かけた。
先生の話によると、お父さんは動物好きで、昔、犬を可愛がっていた。
犬が死んだ時あまりに悲しかったので、その後動物を飼うことはせず、動物の人形を集めだしたということであった。

正しい判断だ。
人形では反応がないから物足りないという人は未熟だ。

ウチの娘二人は、小さい頃実によくお人形ごっこをした。
「リカちゃん」など、いくつもの人形を使って、非常に熱心に遊んでいた。
親なら、可愛い!と思う。
で、写真に取ろうと思って、「ちょっとこっち向いて」と言ったら、「んもう!パパ、あっち行って!」とけんもほろろに言われたほど集中していた。

私は悪い親なので、そんな娘たちに、「リカちゃんなんか、生きてないし、自分でしゃべれないし動けないし、面白くないでしょ」と言った。
次女はぽかんとしていたが、幼稚園に行っていた長女は、猛然と私に食って掛かった。

「パパ!リカちゃんが生きてないとか、自分でしゃべらないとか言うけどねっ、私たちがリカちゃんの気持ちになってしゃべったり、リカちゃんの気持ちになって動かしたりしてるんだからネ、●$#★!」

リカちゃんの人権擁護のため憤然と立ち上がった女弁護士、という感じで、理路整然とまくし立てる娘の剣幕に私はタジタジとなったのであった。

人形が物足りないと言うことはないのである。
しかし、どういうわけか娘たちは最近お人形ごっこをしないようだ。

先日、新聞の投書欄で中年女性がペットに死なれた辛さを書き綴っていた。
大体において、女性はペットに死なれて落ち込み、男は奥さんに死なれて落ち込むようだ。
「夫ロス症候群」というのは聞かない。

以前、朝のバス停でよくいっしょになる人がいた。
70前くらいの夫婦で、ご主人の出勤を奥さんが犬を連れて見送る。
ご主人が乗ったバスが動き出すと、奥さんは犬を連れてバス通りを左に曲がって行こうとするのだが、いつも犬が立ち止まって、首を伸ばしてバスが見えなくなるまで動こうとしない。

「可愛いですねー」と言ったら、ご主人は、「十二年うちにいますから」と言われた。
「奥さんは?」と聞こうと思ったがやめた。