若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

行きつけの店

行きつけのバーとか、なじみのすし屋とかがあって、ときどき顔を出しては、くつろいだひと時を過ごす、てなことがあってもいいとは思うのだが、そんな店ない。

散髪屋くらいだ。

私よりいくつか年上の夫婦がやっている。
30年以上通ってるから、通い始めたころは、30代の若い夫婦だったはずだが、二人が「若かった」という気はしないし、トシとったなあ、という気もしない。
同じスピードで走ってる車が止まって見えるのと同じ感覚かな。

バーやすし屋でないのがちょっと残念だが、私は、なじみの散髪屋でくつろいだひと時を過ごす。

今日は、私が朝一番の客だったようだ。
主人が一人、ソファで新聞を読んでた。

鏡の前に座ったとき、表を自転車で通りがかった人がいて、ガラス越しに見かけた主人は、足早に表に出て、「○○さん!」と声をかけた。
なじみの客で、しばらく顔を見せなかった人で、主人は、病気じゃないかと心配していたのだ。

二人がしゃべってる間、私はほったらかしだ。
しばらくして奥さんが二階から降りてきた。

「お待たせ。洗濯して、今二階の掃除してたとこ」
「朝の忙しいときに、すみませんなあ」
「あはは。家の仕事して、店手伝うて、私は一生働きづめや」

最近、奥さんは愚痴が多い。
主人が戻ってきて、私の頭に取り掛かる。
奥さんは、床を掃きながら愚痴の続き。

足が痛い、腰が痛い、腕が痛い、店のシャッターを上げる時が一番こたえる、整形外科のお医者さんが、「電動シャッターにしたらいい」というので、「高い」といったら、「ダンナの釣竿一本分やろ」といわれた。

確かに、主人は自分の趣味には金を使っている。
猟、魚つり、ゴルフ。
猟犬も、三匹だったか四匹だったか、飼ってるし、魚つりは、モーターボートまで持ってるくらいの熱中振りだ。

竿も、高いのを持ってるんでしょうな。
主人は、電動シャッターと釣竿の話は聞き流して、衆議院選挙の話をはじめた。

顔そりは奥さんの仕事だ。
奥に入った主人が戻ってきて、奥さんに、「ルビー(犬の名前)、あんなとこにつないどいたら可哀想や!冷蔵庫の熱で暑いで!」

電動シャッターのカタキをルビーで討つ。
奥さんも負けてはいない。

「どこにつなぐの?飼いすぎやわ!」

なじみ客ばかりの店で、一番くつろいでるのは、主人夫婦ですね。