若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

ロックンロール!

ツエッペリンの名曲「ロックンロール」のイントロのドラムが鳴り出した時、私はセンベー君と向かい合って彼を見つめていた。
どこから弾きだしていいか分からんので、彼が弾きはじめたらついて出ようと思っていたのだ。
彼に続いて私も弾き始めたが、ずっと彼を見ていた。
いつ、「やめろ!」と目で合図を送ってくるか分からんからだ。
私にも、弾くのをやめるくらいはすぐできる。

もうすぐ歌だなと思った瞬間、背後で爆発音がした。
驚いて振り向いた私が見たものは、黒煙を噴き出して燃え上がるアンプではなくて、絶叫する丑之助君であった。
彼は私が愛する地獄の狂牛だが、最近、進境著しい地獄の若年性狂獣K原君に追い上げられてはいるし、8月の結婚を期に狂牛廃業説も出ていた。
その懸念を吹き飛ばすすばらしい爆発振りであった。

私は感動した。
彼は近鉄バファローズの熱烈なファンである。
今年限りと言われるバファローズの姿が彼とダブったのだ。
髪の毛を振り乱して絶叫する丑之助君の悲壮な姿は、屠殺場で断末魔の叫びを上げる狂牛であり、バファローズであった。

毎年この合宿で初めて彼の歌を聞いてイスから転げ落ちる人がいる。
今年も数人、イスから転げ落ちて耳を覆って床を転げまわっていた。
こういう人たちは来年から合宿に参加しない。

ギターなんかどうでもよくなった。
心から楽しむことができた。

発表会が終わってみんなで飲んでいると、三重県警の機動隊がなだれ込んできた。
アメリカの軍事衛星が、合歓の郷上空で激しい振動を探知したと言うのだ。
北朝鮮の謎の爆発以来神経を尖らせているアメリカからの報告で、機動隊が出動したのである。

私たちは装甲車で三重県警本部に護送され厳しい事情聴取を受けた。
謎の振動が丑之助君の歌によるものとはなかなか信じてもらえなかったので、私たちは取調室で「ロックンロール」を演奏することになったが、彼が歌いだすと即刻釈放された。
軍事衛星が探知した振動の波形と、丑之助君の声の波形が完全に一致したのである。

日本政府からの説明を受けた米国国務省は非常に感動して、12月にテキサスで開催されれる全米畜産業者大会に丑之助君を招き、「キング・オブ・BSE」の称号と「金の角」を授与する予定である。

我々関係者にとって、この上ない喜びである。