若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

魁皇

魁皇が優勝した。

一番好きなスポーツ選手、と言うのもヘンな感じだ。
一番好きなおすもうさん。
スポーツ選手、ましてやアスリートなどと言うちゃらちゃらした存在ではない。

顔がいいし、体つきがいいし、取り口がいい。
気持ちのいいお相撲さんだ。

魁皇

わけの分からんしこ名だ。
後白河法皇の御落胤かという、おごそかかつ怪しげな雰囲気がある。

来場所こそ全勝優勝で横綱だ!
頼むぞ!魁皇

私が小学生の頃は、よく相撲を取った。
学校で体育の授業でもしたし、休み時間にもした。
よく道路に円を描いて、土俵にしてみんなで相撲を取った。

近くに広い空き地があった。
平地のこともあったし、ダンプカーが土砂を捨てに来て山のようになることもあったし、土砂をどんどんもって行って深い穴ができて雨水がたまって池のようになることもあった。
子供にとっては天国のような場所だった。

そこが、高さ2メートルくらいの台地のようになったときのことだ。
台地の上で、四年生か五年生だった私は「ボクちゃん」と相撲を取っていた。
ボクちゃんは一つ下で、身体も私が大きかったので、私が勝ち続けた。

台地の下で、幼稚園ぐらいの「りょおちゃん」と「てっちゃん」が私たちの相撲を見物していた。

「ボクちゃん」が私の耳元でそっとささやいた。
「勝たせて」
了解。
私もそっとささやいた。
「上手投げ」

私たちは、観客の目を十二分に意識しながら、激しくぶつかり合った。
厳しい差し手争いから「ボクちゃん」十分の左四つ。
私の怒涛の寄りをボクちゃんが必死にしのぎ、ボクちゃんが寄り返す。

土俵中央に戻って数呼吸。
ボクちゃんが上手投げを打つ瞬間、私は思い切り地面をけって宙に浮くと、遠くに吹っ飛び、台地から転がり落ちた!

勝ち誇ってにっこり笑うボクちゃんを見上げる、「りょおちゃん」と「てっちゃん」の呆然とした顔。
二人とも信じられない大技とボクちゃんの怪力に目をまん丸にして口をぽかんとあけたままだ。

五十年近く昔の、坊ちゃん刈りの「りょおちゃん」と、くりくり坊主の「てっちゃん」が、口をぽかんと開けて目をまん丸にした表情を鮮やかに覚えている私の脳を久しぶりにほめてやりたい。