朝刊の写真。
新潟で土砂崩れに巻き込まれて奇跡的に助かった男の子と、亡くなったお母さん、今なお捜索が続けられている女の子の写真だ。
新聞でこういう写真を見ると、昔読んだ新聞記者の話を思い出す。
その記者は社会部だったので、事件や事故の被害者の家に取材に行くことが多かった。
犯罪や事故で亡くなった人の家に行って、新聞に掲載するための写真を手に入れるのがつらい。
被害者の家に上がりこんで、打ちひしがれたり、半狂乱になっている家族に、写真がほしいと頼む。
涙ながらに渡されたアルバムから、被害者の写真をべりべりとはぎ取るとき、つくづく因果な商売だと思う。
私は、それ以後、こういう写真を見ると、アルバムからべりべりとはぎ取られた写真のような気がする。
最近は、べりべりではないだろうが。
二十年ほど前、取引先の人と話していたら、突然、「新聞記者ってひどいですよー」と言い出した。
その人の小学生の息子が池に落ちておぼれているところを、大学生に助けられた。
病院から帰った息子を寝かせていたら、新聞記者が大学生を連れてやってきた。
「息子さんと大学生とならんだところを写真に撮りたいので、連れて来てくれ」と言ったそうだ。
やっと落ち着いて寝たところだからと断ったが、布団から引きずり出されて写真をとられた。
翌日の地方版に、「救助された○○君とお手柄の△△さん」という写真が出たそうだ。
それ以後、こういう写真を見ると、布団から引きずり出されたのかと思うところだが、そんな写真は見たことがない。
今回の地震の模様を最初に見たのは、NHK新潟支局の様子だ。
揺れ始めて右往左往する局員の中で、ビデオカメラをつかんで撮影を始めようとするカメラマンが写っていた。
昨日も、テレビの取材中に余震が起きて、カメラマンたちがいっせいに、大きく揺れる被写体やおびえる人々を求めてカメラを振り回していた。
「カメラをやたらに動かしてはいけない」という、撮影の基本が守られていないので、「揺れ」はうまく記録されていなかった。
「山よ崩れよ!」「木々よ倒れよ!」「人々よ泣き叫べ!」
これも因果な商売だと思うが、画面を見ているあんたもいっしょだと言われれば、画面から目をそむけてむっつり黙っているしかないかな。