若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

三尺もの

ときどき、突然つまらんことを思い出すこがある。
しょっちゅうか。

学生時代、横浜の本屋で本を探していたときのこと。
和服の中年女性が入ってきて、店員に
「年寄りが、『三尺もの』を読みたいってんですがネ」

「三尺もの」?
「長ドス」とか言うから、「やくざもの」「股旅もの」という意味だろうなと、想像はついた。
店員は、「はいはい、こちらです」と、その女性を連れて行ったから、「三尺物」というのは、関東の本屋さんではよく出る言葉なのだろうと思った。

それからしばらくして、「東京新聞」の投書欄で「三尺もの」という言葉を見た。
かなりの年の男性の投書だった。

その人は若いころから詩が好きだった。
ある日、本屋に詩集を買いに行って探していたら、店員がやってきて
「おじいちゃん、こっちこっち」
と案内された。
詩集を探しているのがわかったのだろうかと不思議に思いながらついて行った。

店員は
「はい、三尺ものはここですよ」と言って去って行った。

「年寄りだって、三尺ものばかりとは限らない」とその人は書いておられた。