近鉄奈良線学園前駅でときどき見かける、若くて背の高い、きりっとした眉の、目元の涼しい、髭剃りあとの青々と清潔そうな、私を見るといつも微笑んでくれる、笑顔のステキな駅員さんが好きなんですというような話ではない。
電車を見送る駅員さんが好きだ。
ホームから遠ざかる電車を見つめ、背筋を伸ばして直立不動、おもむろにさっと右腕を伸ばし、一呼吸おいてうなずく。
「ヨシッ!」と言っているのだろうか。
いつ見てもいい姿だ。
町で見かけるいろいろな姿の中で一番好きだ。
「職務をまっとうする」とか「責任感」という言葉が形になっているように思える。
「7時10分発難波行き快速急行、定刻どおり無事発車しました!」
どこまで見届けるのだろうか。
ホームを離れるまでか。
厳かな儀式のようでよろしい。
人間もこのように見送れたら良いのであるが。
学校を卒業して社会に出て行く子供、結婚して新しい家庭を作る子供、死んでいく親の後ろ姿を指差して、「ヨシッ!」と言いたいものだ。