小学校の同級生だ。
「和雄」と言うのは「昭和の英雄」と言う意味だと言っていた。
卒業以後のことは知らなかった。
音楽家になっていると聞いたことがある。
ふと、インターネットで検索してみた。
おお!あった!
アルトサックス奏者として、「シャープスアンドフラッツ」などで活躍し、現在はバンコクで活動しているそうだ。
大学で、ジャズ理論も教えているらしい。
すばらしー!
あの鈴木君が。
一番上のお兄さんが東京で音楽をしていると言う話は彼から聞いたことがあった。
カタカナのバンド名を聞いたが忘れてしまった。
5年生の時だったか、彼に「山下敬二郎の『ダイアナ』!ええなー!」と言われて、私は何のことかわからなかった。
音楽の話をしたのはそれだけだし、彼が、歌やハーモニカがうまかったと言う記憶もない。
18歳でプロになったと書いてあるから、中学くらいから音楽に目覚めたのだろうか。
鈴木君の家に遊びに行ったことがある。
私たちが遊んでいる隣の部屋で、詰襟の学生服を着たお兄さんが勉強していた。
夕方暗くなって、鈴木君が私に、「電気つけて」と言った。
私が立ち上がってつけようとしたら、お兄さんが
「和雄!自分でつけろ!」と厳しく言った。
私は、「ひ〜、お兄さんってこわい!」と思った。
鈴木君はいい体格だった。
水泳の時間、プールで胸を張って、「オレ、『一枚アバラ』かもしれん」と言った。
「一枚アバラ?なにそれ?」
「アバラ骨がつながって、一枚の板になってるんや。力道山が一枚アバラやで」
力道山といっしょ!
私は感心した。
それからしばらくして、鈴木君は、「オレ、一枚アバラと違たわ」とさびしそうに告白した。
私は、正直だと思ってまた感心した。
水泳パンツの鈴木君が、胸をつき出してニコニコと自慢の「一枚アバラ」を見せびらかしている姿が目に浮かぶ。
いつものことながら私の脳に聞きたい。
なぜ鈴木君のそんな姿を覚えているのだ。