若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

甥の結婚

明日は甥のK太郎の結婚式だ。

私は子供のころ、野球選手になりたいとか漫画家になりたいとか、漠然と考えていたが、痛切になりたいと思ったのは「おじさん」だ。

小学六年のとき、同級生の鈴木君が指をぱちぱち鳴らしながらニコニコ顔で近づいてきた。彼は、指を鳴らすのがうまかった。今はタイの音楽学校で教授をしているそうだ。

「オレ、おじさんになってん」

衝撃の告白であった。わけがわからないまま、負けた!と思った。
返す言葉もなく、敗北感に打ちひしがれていた。
なぜこんなにもうらやましくくやしいのかはわからなかったが、鈴木君が勝ち誇っているのも事実であった。

理性的な子供であった私は、最初の打撃から立ち直ると考えた。
「おじさんになる」とはどういうことか。
私にはおじさんがいた。
「きよしおじさん」「ただすおじさん」「おさむおじさん」「あきらおじさん」。
鈴木君が、このおじさんたちと同格になったとでも言うのか。
納得できなかった。どういう手続きを経て「おじさん」になったのかがよくわからなかった。

家に帰ると早速母に報告した。
私の表情と口調がよほど不満気だったのだろう、母はおかしそうに笑いながら言った。
「お兄さんに子供ができたんやね」

お兄さんに子供!
絶望的だ。
私には「お兄さん」はいない。

私は「おじさん」になれないのかと食い下がると、母はまた笑って言った。
「加代子に子供ができたらあんたもおじさんになれる」
完全に絶望だ。
加代子は私の妹で四年生だ。

十数年後、妹が妊娠したと聞いたとき私は飛び上がって喜んだりしなかったし、妹の大きなおなかを見て、今か今かと首を長くしたりもしなかった。
しかし、生まれたK太郎の顔を見たとき、私は猛烈な「おじさん感」に襲われた。
「甥はかわいい!」と思った。
K太郎は、「漫画日本昔話」の実写版を製作するなら、桃太郎か金太郎役はこの子だ!という感じの男の子だった。

我が家は、父も祖父も「子煩悩系」だ。
私もその血をひいているので、K太郎が小さい頃は父と私は奪いあいで風呂に入れたものだ。
よちよち歩きのK太郎を風呂に入れようと服を脱がせた。
風呂場に入っていくのを見て急いで服を脱いでいると、ボチャンという音がした。あわてて風呂場を見たら、頭を湯に突っ込んで足をばたつかせていた。許せK太郎