若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

「ヒステリー」のしりもちに超ベテラン教師は

一昨日書いた音楽のM先生(愛称「ヒステリー」)は、扇千景参議院議長の目が細くてつりあがっているような雰囲気の人だった。

当時PTAのバス旅行がときどきあったようだ。
母の話では、バスの中でM先生はよく歌を歌った。その歌の作曲者の話とか、長々と解説してから歌うM先生を、母は半ば尊敬していたのであろうが、私はその話に反感を持った。
申し訳ないことだが、M先生(愛称「ヒステリー」)に反感を持っていたのだからどうしようもない。

六年のときの音楽の授業でのことだ。
音楽室での授業はほとんどなかった。50人クラスの狭い教室の正面で、先生がオルガンを弾く。
先生の机に置いた答案用紙かなにかを生徒が一人ずつ取りに行った。
先生の後ろを通るのだが、狭いので先生はオルガンの前で立っていなければならない。

全員取り終わって、座ろうとした先生の姿が私の視界から突然消えた。
ドシンという音と、「ギャー!」という悲鳴が聞こえた。
何が起こったかわからなかった。
目をつり上げた先生が憤然と教室から出て行った。
悪童のY君が先生のイスを引いていたのだという情報が、騒然たる教室に一瞬にして伝わった。
M先生がしりもちをついたのだ。

私は騒ぐ気にならなかった。
大変なことになったと思った。私は学級委員だったのだ。

しばらくすると担任のA先生がやってきた。先生は「おばあちゃん」であった。超ベテラン教師である。

私が三年生か四年生のとき、小学校の創立八十周年記念式典が行われた。
そのときA先生は、勤続三十年だったか四十年だったかで表彰された。
年数を聞いてボーゼンとしたことをおぼえている。

さて、どれだけしぼられるかと緊張して待っていたのだが、先生は穏やかに諭すように話された。意外であったし少しほっとした。

クラスへの説教が終わると、心配していた通り、私は先生に呼ばれた。
学級委員絶体絶命だ。今度こそ厳しく叱られる。
先生は私に、クラスを代表して職員室に行ってM先生に謝りなさいと言われた。
「M先生は大変怒っておられるからね」

このとき、私はなんだかヘンな感じがした。
先生が笑いをかみ殺しているように見えたのだ。
そういえば、教室に入ってきた時から、先生はうきうきしているように見えた。
その状況を六年生の私は理解できなかった。