朝日新聞で何日か前に紹介されていた歌。
七回忌過ぎしといふを夫の部屋にかたづけぬものかたづかずあり
少し違っているかもしれないが、亡き夫への思いが伝わって来る歌だ。
以前、ご主人を若いときに亡くされた方と話をしていた。仕事の関係で、そのご主人も知っていた。四十代くらいで、三人の子供を残して亡くなられたのだ。
それから十数年、子供たちも成人したあとのことだった。
なんの話をしていたのだったか。
「主人を亡くして、泣きの涙も三回忌までよ。七回忌も過ぎたら、ああ、そんな人いてたなあ、てなもんよ。あははは」
こうして笑って話せるようになるまでにはさぞや、とそれまでの苦労をしのぶ気にならないような明るさであった。
ほっとする。
陽気な未亡人。いい感じである。
男だったらどうか。
「家内のことですか。七回忌も過ぎれば、そんな人もいたなあ、てなもんですよ。わはは」
不誠実な男、という気がしてしまう。
私が女性に甘いのか。
母が入っている施設でも、ご主人がぼけた奥さんは余裕があるように思う。
ご主人の手を引いて歩いている表情も、「ほんと、こんなになってしまいましてねえ。これでも以前はずいぶんと威張っていたんでございますよ。こちらでよくしていただいておりますので私も安心でございます。おほほ」的余裕を感じる。
奥さんがぼけた男性は、天罰を受けた罪びとのような感じである。余裕のかけらも感じられない。
最初にあげたような歌は男に詠めるだろうか。
「妻の部屋」はちょっとないだろう。台所は七年間も放っておくわけにはいかない。
「夫の部屋」も少ないのではないか。
私も、「エレキギターを弾く小部屋」があるくらいだ。
私の七回忌もすんで、家内が私の愛用のエレキギター、ギブソンレスポールや、フェンダーのエレキギター用アンプ「フロントマン」を見てしみじみするだろうか。
七回忌過ぎしといふを夫の部屋のギブソンレスポール爆音やまず
しみじみ感が足りんな。