若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

日本人のおとなの皆さん

昨日帰りの電車で座って本を読んでいると、向こうの方で男が何か話し始めた。
離れているのでなにを言っているのかはわからない。
誰かと話しているのだろうと思っていたら、少し声が大きくなってきた。

「・・・・電源を切ってくださいよ・・・・」

穏やかにお願いしているという感じだ。
ペースメーカーを使ってる人なのだろうか。

「電源を切ってください!マナーを守ってください!」
だんだん声が大きくなる。

「私は、あなたのような若い方にマナーを守ってほしいんです!」
切々と訴えている。

声の方を見ると、時々見かけるあの人だった。
私と同じ駅から乗る人で、私と同じ年恰好だ。
いつも手にビニール袋と小さな火箸のようなものを持っていて、駅や電車内のごみを拾って袋に入れる。

透明の小さな袋はタバコの吸殻やごみで一杯だ。
駅や車内の美化につとめているいい人には違いないのだが、ごみの詰まった透明の袋をぶら下げているので、申し訳なく気の毒でもあるが、なんだか「悪い人」のような気がする。

その人が、いつものように火箸とごみの詰まった透明の袋を持って、前の座席の若者に説教を始めたのだ。

なんだかわからんが、「マナーを守ってください」の一点張りだ。
若者がぶつぶつ言った。

と、その男は大声で叫んだ。
「なにを言ってるんだ!キミのような若者がそんなことでどうするんだ!」

すっかり逆上している。
酔っ払っているのだろうか。

若者の隣の人に食って掛かった。
「あなたもいけないんですよ!おとなが甘やかすからいけないんです!見て見ぬふりをしないで注意してやってくださいよ!」

乗客に向かって演説をはじめた。
「日本人のおとなの皆さん!しっかりしてくださいよ!皆さんがだらしないから、こんな若者が出来るんです!」

演説しながら、こちらに向かってきた。
「日本人のおとなの皆さん!」と訴えながら私の前を通り過ぎて行った。

この人が、駅や車内の美化につとめ、公衆道徳の向上を訴えるいい人だと思う人はないであろう。
気の毒である。