小学館で赤塚不二夫を担当していた武居俊樹さんが書いた本だ。
赤塚不二夫ファンにはうれしい本である。
読み出したところなのにこの本について書きたくなるほどうれしい。
私は、熱烈なファンになったりモノを集めたりするたちではない。
高校の頃、ベンチャーズやビートルズが日本に紹介されるとすぐファンになったが、ラジオで聞いたり録音して聞くだけで満足で、レコードを買いたいとは思わなかった。
金がなかったということもあるが、ベンチャーズのレコードは一枚も買わなかったし、ビートルズのLPを買ったのは大学に入ってからだ。
そんな私が、大学時代、『おそまつ君全集』『天才バカボン全集』『もーれつア太郎』を買いそろえたのだから、よほど好きだったということになる。
初めて「おそまつ君」の名前を聞いたときのことははっきり覚えている。
高校の帰り、当時まだ地上駅だった近鉄上六駅で電車に乗って座っていた。
前の席で小学生の男の子達が、雑誌に連載中の『おそまつ君』が面白いという話をしていたのだ。
私は、『おそまつ君』というおそまつなタイトルにあきれた。
有名になってしまったから今ではヘンに感じないが、そのときは本当にくだらんばかばかしいちゃちなタイトルだと思ったので強く印象に残ったのだ。
小学生向けのつまらん漫画なのだろうと思った。
後で自分が夢中になるとは思いもしなかった。
生意気盛りの高校生であった私は、子供漫画など見向きもせず、美術部のU君が教えてくれた漫画雑誌『ガロ』に熱中していた。
白土三平、つげ義春、水木しげる、佐々木マキなどを知った私には『おそまつ君』など問題外であった。
大学に入っても『ガロ』を買い続け、特につげ義春の作品が掲載されると切り取って保存したほどであった。
赤塚不二夫を読むようになったきっかけは覚えていない。
いつのまにか『少年サンデー』の『もーれつア太郎』の大ファンになっていた。
「ニャロメ」は私が描ける唯一のキャラクターだ。
大学の医学部の図書館でアルバイトをしていたとき、紙にニャロメを描いた。
度の強いめがねをかけたいかにも本の虫という感じの館長がその紙を取り上げてじーっと見つめて、「ネコ・・・ですか?」と言ったので笑いをこらえるのに苦しかった。
「あしたのジョー」も「巨人の星」も大きらいで、赤塚不二夫一筋だったのだ。