土曜日の夜、救急車で運ばれた。
朝から首がおかしかった。
徐々にひどくなって、吐き気までしてきたので、筋肉ではないかもしれないと思って病院に行った。
筋肉痛でしょうとのことであった。
死ぬかと思った。
死ぬかと思ったのは二度目だ。
何年か前、家内が通っている温水プールに連れて行かれた。
家内が白鯨のように水煙を立てて、じゃなかった、白魚のようにすいすいと泳ぐのを見て、負けん気を出して泳いだのがいけなかったのだろう、プールから出てひっくり返ってしまった。
以来、スポーツは見るだけだ。
別府大分毎日マラソンを見る。
レース中に注目選手をビデオで紹介する。
練習風景や監督の談話、最後に本人が抱負を語る。
「他の選手に、完敗だった、と言わせるような勝ち方をしたいと思います!」
いいぞ!
中継に戻ると、その選手がずるずる遅れていく。
次の注目選手の紹介。
「監督が出した記録を破って優勝したいです」
よし!
中継に戻ると、またもその選手が遅れだす。
あまり注目されていない選手が健闘している。
アナウンサーが、「いいリズムで走ってます!」
コマーシャルが入る。
レースに戻る。
「先ほどいいリズムと申し上げました○○選手が遅れ始めました」
30キロを過ぎて先頭集団がしぼられる。
「キプチュンバが力強い走りです。先頭にぴったりついて不気味な感じです」
と言ったかと思うと、キプチュンバが遅れ始める。
トップがタイス、佐藤が2位。
タイスがスパートしたのか差が開きだした。
「あ!タイスがペースを上げたようです。タイスに上げられて佐藤に上げられないはずはありません!」
独断的だ。
佐藤選手の意見も聞いてほしい。
「タイス選手がペースを上げましたが、あなたは上げられますか。三つの中から選んでください。1.上げられる。2.上げられない。3.どちらとも言えない」
アナウンサーの一方的な言い方に嫌気が差したのか、佐藤選手が大きく遅れる。
「タイス独走です!悠々自適!」
ゆ、悠々自適?
タイス選手が年金生活者でコタツに入ってテレビでも見ているかのようである。
アナウンサーは、「独走を許すな!」と空しく叫んでいたが、残り1キロを切ってあきらめたようで、「マラソン界最強の男タイス!」と叫んでいた。