朝の駅で。
私の何メートルか前を、おじいさんが歩いていた。
80歳半ばと思える正真正銘のツルツルのおじいさんで、足が曲がっていて右手で杖をついている。
一足ごとに右に大きく傾く。
エスカレーターまでに追い抜こう。
失礼しますと会釈の一つでもして追い抜こうと礼儀正しいことを考えて足を速めた私は驚いた。
おじいさん、速い!
私が速度を上げたのに抜けない。
抜けないどころじゃない。
差が開くではないか!
待って!おじいちゃん!
エスカレーターに来てしまった。
あっ!おじいさん、左じゃありません。
お急ぎのお客様のために左側は空けてくださいとお願いしようとした私はまたも驚いた。
おじいさん、止まらない。
エスカレーターを一気に上っていく。
杖をついて右に大きく傾きながら。
すばらしい!
魔法の杖なのか。
トリノオリンピック日本選手団の諸君!
キミたちもスポーツマンのはしくれなら、このおじいさんのように、私たち一般国民を感動させ力づけ勇気を与えるようなパフォーマンスをお願いしたい。
おじいさんの力強く美しい「歩き」を見よ!
プルシェンコがなんじゃ!