若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

『誰も教えてくれない聖書の読み方』

田川建三先生の新約聖書の講座に通うようになって一年以上過ぎた。
試験がないから生徒でいられる。
学問の世界を少しでものぞいてみたいと思ったのだが、まあ、のぞき見るくらいはできているかと思う。

最初の時間で驚いたこと。
先生が読み上げる聖書と、私の持って行った聖書と言葉が違う。

先生は私の聖書をひと目見て、「それはアメリカの原理主義者の聖書です」と言われた。

原理主義者の聖書!
日本語の聖書にいろんな種類があるとは知らなかった。

ケン・スミスの『誰も教えてくれない聖書の読み方』を買った。
学者ではない普通の人だが、はじめに「英語の聖書にはいろんな種類がある。どの翻訳もスポンサーの政治的立場を反映している」と書いている。

私よりはるかに頭がいいと思った。

なぜこの本を書いたかは、訳者の解説でよくわかる。
欧米はキリスト教社会だが、普通の人は聖書を読まない。
教会で、お説教に都合のいい有名な部分を繰り返し聞かされるだけだ。

で、聖書にはこんなことが書いてあるんですよと、この本を書いた。
原題は、『ケンの聖書ガイド』

う〜ん、旧約聖書はえぐい。
登場人物は、暴力、好色、強欲の限りを尽くし、神様はそれを罰したり罰しなかったり気まぐれだ。

創世記の「ノアの箱舟」を紹介してある。

「ノアはぶどう酒に酔っ払って性器をむき出しにして寝てしまい、息子のハムがそれを見る」

ホ、ホントにこんなことが書いてあるのか?

ウチの聖書で調べた。
原理主義者の聖書。
「ノアは裸になり、息子のハムは父の裸を見た」
念のためもう一冊、口語訳聖書。
まったく同じ訳だ。

「性器をむき出し」なんて書いてないではないか。
念には念を入れて、『文語訳聖書』を見る。

「葡萄酒を飲みて酔ひ、天幕の内にありて裸になれリ。ハムその父のかくし所を見て」

なるほど。
文語訳の方がきっちり訳しているようだ。

別の本でも似たようなことが書いてあった。
エスが、「食べたものは便所にぽっとんと落ちる」と言ったのを、文語訳は「厠に落つるなり」だが、現代訳は「食べたものは外に出る」としている。

現代の翻訳は、あまりお行儀のよくない言葉は使わないよう自己規制しているようだ。