インターネット上の広告が増えているらしい。
テレビや新聞、雑誌の広告は減っているというのだから、広告主から見てインターネットが「良い媒体」なのだろう。
不思議なことである。
私にとって、インターネット上の広告は存在しないのと同じだ。
目に入らない。
「なにか広告みたいなものがあるな」とは思う。
なんだろうかとは思わない。
無視。
インターネット上の広告なんか見ている人がいるのだろうかと思って娘に聞いたら見ていると言う。
見ていないのはトシのせいなのか。
子供の頃、たまに来るチンドン屋もうれしかったが、広告で一番うれしかったのは、飛行機からばらまくビラだ。
考えてみるとひどい話だ。
紙くずをばらまいていたのだ。
しかし、うれしかった。
外で遊んでるとき、ブーンと小型飛行機の音がする。
見上げていると、機体からぱっと無数の紙が飛び出す。
「あ!ビラや!」
遊びもほったらかしで駆け出す。
女の子は行かなかったように思う。
どこに落ちるともわからないビラを求めて走るなどというあほなことは女の子はしない。
紙ですからなー。
飛行機からばらまくんですからなー。
少々のことでは落ちてきませんよ。
そんなもの追いかけるのはあほだと言われても仕方がないですな。
しかし、喜んで追いかけた。
エンエンと追いかけた。
ビラが一万円札であるかのように追いかけた。
そうして息も絶え絶えにつかんだビラが、「八尾駅前商店街みやこふとん店」の開店お知らせのビラだったとき、うれしいようながっかりのような、とてもへんな気持ちで、握り締めたビラを見つめてハアハアゼイゼイしていたのであった。
いくらがっかりしてもこりませんでしたね。
またある日飛行機からビラがまきちらされるのを見ると、条件反射のように駆け出す私たちであった。
そういう日があったことを思うと、私も大人になったものだとしみじみする。