朝のテレビで「野球上達商品」を紹介していた。
「バッティングフォーム矯正用バット」というへんてこなバットは、理屈がよくわからなかった。
「捕球動作習得用グローブ」はよくわかった。
この「グローブ」は、スポンジ製の板みたいなものである。
板を手にはめてボールをとるのだからうまくとれない。
もう一方の手を添えなければならない。
こうして、捕球の基本である、「両手でとる」ことが自然に身につく。
単純で優れたアイデアだと感心した。
この「板グローブ」を見ていて、Mさんの「ジャムパン」を思い出した。
Mさんは、小学校で同じクラスだった女の子だ。
私の子供の頃、男の子にとってグローブは必需品だった。
ぜいたく品的必需品だったのか、必需品的ぜいたく品だったのか。
気軽に買えるものではなかったと思うし、と言って、親としてはほしいと言われれば無理をしてでも買う義務があったと言えるのではないか。
前後のいきさつは忘れてしまったが、校庭でクラスの友達と野球をしていた。
クラス対抗の試合のために練習していたのかもしれない。
Mさんが、小さい布製のグローブを持ってきた。
革のグローブの代用品として売っていたのだと思う。
私たちは、Mさんの布グローブを「ジャムパン」と呼んだ。
当時、グローブの形のジャムパンがあったのだ。
みんな面白がって使わせてもらった。
Mさんは、髪はおかっぱで、顔は「金太郎・若武者系」だった。
先生が、「Mさんは授業中大変姿勢がいい」とほめたことがある。
私は、「ほんまや!」と思った。
Mさんは、いつも微笑を浮かべて背筋をすっと伸ばして泰然自若という感じで席に座っていた。
校庭で、そのMさんが布製グローブをつけてフライを捕球する姿を思い出す。
女の子独特の捕球フォームだ。
へっぴり腰で、顔をボールから少しそらせてあごを突き出し、ジャムパンをはめた手をボールに向かっていっぱいに伸ばしている。
うまくとれたかどうか覚えていないのが残念である。