若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

返ってきたビオラ

文学的なタイトルである。

昨夜、我が家にビオラが戻ってきた。

このビオラは、アマチュアビオラ奏者であった私の父が、昭和13年中国大陸に出征した時、現地の楽器店で求めたもので、戦地での心の友としていたのだが、敗戦となり帰国の際、大連で世話になった中国人家庭にお礼として置いてきたのを、その方の孫が持ち主の日本の兵隊さんに返したいと北京の日本大使館に持ち込み、約二年半、各方面に問い合わせた結果、昨日やっと探し当てた我が家に持ってこられたというような劇的な話ではない。

返ってきたのは次女のビオラである。
次女は、高校はピアノ科で、第二楽器としてビオラを選び、時々家でヘンな音を出していた。
私のエレキギターの方がまだましというレベルであった。

数年前、高校時代の友達が貸してほしいというので貸したところ、それっきりになっていて、こちらも忘れていたのを、昨日突然返しに来たのである。

文学的でもなく劇的でもなく、世の中ずぼらな人もいるというだけの話である。

昨日は昼寝をした。
休みの日に昼ごはんを食べると眠くなる。

ソファに横になって寝る。
寝る時、家内に本を読んでもらうことが多い。
家内は「朗読家」なのである。
「朗読検定試験」に合格したとか「一級朗読士」の資格を持っているというわけではない。
「自称朗読家」というと詐欺師みたいだが、まあそんなところだ。

寝る時読んでもらうのは「新約聖書」なんかがいい。
「第一ヨハネ書簡」などを読まれるところっと寝てしまう。
読み方がいいのか内容がいいのかよくわからないがすぐ寝る。

昨日は、何を読んでもらおうかと思っていたら、突如紙芝居をしてあげると言い出した。
紙芝居は家内の得意中の得意だ。
ウチの三人の子供とその友達たちを前に演じてきた実績がある。

ソファの前のテーブルに舞台を置いて本格的に演じた。
『しあわせの王子』と『ねずみ経』の二本立て。

オスカー・ワイルド原作の『しあわせの王子』は悲しくて寝ていられなかった。
『ねずみ経』を聞いてうとうとしながら、今、世界でよめさんに紙芝居をしてもらいながら昼寝をしてる男は何人くらいいるだろうかと思った。
十人もいないのではなかろうか。

そう思うとうれしくなってニコニコ笑いながら眠った。