朝、家を出ると道路に雀がいた。
ぱっと飛び立ったので、驚いて逃げたのだろうと思ったら、植え込みの中に入っていった。
植え込みに隠れたのだと思ったら、また飛んで出てきた。
飛び方がおかしい。
上がっていかず下がってくる。
けがでもしているのか。
ふらふら飛んで道路に降りた。
ガサガサ音がする。
なんと、セミをくわえていたのだ。
セミは激しくもがいて、飛んで逃げていった。
雀がセミを襲ったのだと思うが、どうなのだろう。
私は鳥類について知識がない。
「雀」と「襲いかかる」という言葉とが結びつかない。
ワシ、タカ、ハヤブサ、コンドルなどは襲いかかると思う。
この雀は勇敢といえばいいのか。
両者の身体の大きさを見ていると、身の程知らずとも思えた。
雀にとって、襲って食べるにはセミは大きすぎるのではなかろうか。
動くものには反射的に襲いかかるのだろうか。
去年だったか、カラスがセミを襲うのを見たことがある。
カラスはセミを襲う資格あるいは権利があると思う。
見ていても不自然ではなかった。
空中戦であった。
必死に逃げていたセミが、どういうわけか反撃に転じた。
「窮鼠猫をかむ」というのはあるが、「窮セミカラスを襲う」。
セミに追われてカラスが逃げまどうのがおかしかった。
セミとカラスでも、「気合負け」というのがあるようだ。
精神力は大事だ。
雀がこんなに獰猛な鳥とは知らなかった。
物心ついて以来抱いていた雀に対するイメージが一変してしまった。